長谷川豊アナが炎上…年間1.6兆円「人工透析」の実態

エンタメ週刊新潮 2016年10月20日号掲載

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「暴論」とは文字通り、乱暴な議論のことであるが、結果的に、蓋をしておきたい何かを「暴く」論となることもありうる。先頃、フリーアナウンサーが発した暴言も、その是非とは別に、日本の「人工透析」が抱える恐ろしい実態の一端を炙り出したのは確かである。

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 その長谷川豊アナ(41)がブログに記したのは、

〈自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!〉

 という発言であった。

 彼の論理は、〈人工透析患者の8〜9割は「自業自得」の食生活と生活習慣が原因〉で、それによって〈保険料、食いつぶされ続けている〉。そして、そうした患者を「バカキリギリス」とした上で、〈餓死しなければいけない。でなければ、アリさんはやる気を失う〉というもの。むろん、関係団体などから非難が噴出し、長谷川氏は出演番組すべてを降板させられた。

元々はフジテレビの局アナだったとか(公式ブログより)

 もっともこの騒動、批判の中心は「自業自得」とか「殺せ!」といった言葉の評価。その意味では、プロのアナウンサーであることが不思議なくらい、言葉選びの感覚に欠けた人物と言わざるをえないが、

「人工透析の現状を見れば、将来、自己負担を増やせ!の声が多方面から出てくるのは、十分ありうる話です」

 とは、医師でジャーナリストの富家孝氏である。

■“定期預金”

 さる腎臓内科医が言う。

「2014年で日本の人工透析患者は32万人。彼らは大抵、週に3日、1日4時間ほどの治療を強いられ、これにかかる費用は1人あたり年間500万円と言われています。単純に32万人をかけると、総額で年間1兆6000億円にも上ります」

 月に直せば40万円ほどもかかるため、高額療養費の特例が適用され、自己負担は上限月1万〜2万円。さらに透析患者は身体障害者の1級に認定されうるから、それらを合わせると患者負担が0円のケースも。つまり、国民が納めた保険料や税金からこの額が負担されることになるのだ。

 また、

「人工透析で問題なのは、病が完治することは難しく死ぬまで付き合わなくてはいけないものであることです。一度受ければ、元に戻るのは容易でなく、費用もかかり続ける」(同)

 先の富家氏も続ける。

「厄介なのは有効な対策がないこと。腎臓移植が進めば良いのですが、日本の場合はドナーが圧倒的に足らず、年間で移植が出来るのは1300人ほどです。また、医者にとっては、人工透析患者は“定期預金”。永遠のリピーターになりますから、患者を人工透析に誘導しがち。そうさせない動機が働かないのです」

 かくして、透析患者は1年に6000人ほど増えている。先の1・6兆に加え、年間約300億円の負担が増え続けるのだ。

「これでは国の財政は破綻する。その前に、人工透析の自己負担額を増やせ、という議論は起きるはずです。しかし、増やしたところで、人工透析の患者さんは、週の半分は病院通いですから、仕事もままならず、経済的に高額の医療費を払う余裕などない人が多い」(同)

 つまり、完全に袋小路というワケだ。一アナウンサーの進退など論じているのが滑稽なほど切迫した状況と言えるが、そのことを一体、どれだけの方が騒動から読み取ったことであろうか。

ワイド特集「君の名は」より