“ジャイアント・キリング” 7人制ラグビーは日本向き競技だった

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究極の鬼ごっこ(※イメージ)

 敵方にとっては、二度と思い出したくない前後半14分だったし、もう一度やり直したい時間だったに違いない。昨年のW杯で15人制の日本代表が南アフリカを倒して世界を驚かせたが、リオ五輪では7人制で「ジャイアント・キリング」再び。世界ランク1位のニュージーランドを同12位の日本が撃破し、ベスト4に名を連ねたのは、この競技が日本向きだからだった。

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「7人制と15人制の一番の違いは、グラウンドの広さが同じにも拘らず人数が半分以下なので1人当たりのスペースが大きくなること」

 と話すのは、スポーツライターの直江光信氏。

「15人制だと、どれだけ能力が高くても走ればどこかで捕まってしまうもの。ですが、7人制の場合はずば抜けた選手がいると簡単に抜けてしまう。前者が格闘技に喩えられるのに対し、後者は『究極の鬼ごっこ』と言われます」

 つまり、敏捷性に優れる方が有利に違いないというわけだ。実際のところ、世界ランク2位で今回も銀メダルを獲得したイギリスチームは、100メートルを10秒台で駆け抜ける選手を擁する。

「日本チームが特別速いわけではない。ただ、高い組織力がこの競技にマッチしているのが証明されたのは事実。海外では、“今大会で最も飛躍したチームはジャパンだ”と評するメディアもあったほどです」(同)

 前後半は各7分(決勝のみ10分ずつ)。トライ後のキックオフは、15人制だとトライを取られた方がキックして始めるが、7人制の場合はその逆である。したがって、

「流れが一旦できてしまうと、修正できないままノーサイドを迎えることがしばしば。15人制では100回やって1回も勝てないというのはザラですが、7人制に『絶対』はない。番狂わせが少なくない分、日本がラグビーで世界一になるとしたら、7人制の方が近いと見ています」(同)

■寝不足の夏を

 とは言うものの、7人制が15人制より低く評価された時代は長く、

「息子は15人制の代表に招集されたこともあるんですが、いつからか呼ばれなくなってしまった。そういう悔しさを今回ぶつけたんじゃないかなって思うんです」

 と、主将である桑水流(くわずる)裕策(30)の父・正大さん(62)。

「小学生の頃からサッカー少年だった息子が高校に入ってラグビーを始めたきっかけのひとつは、私がラグビーを勧めたから。勝っても泣ける、負けても泣けるという面が好きだったんです。今はただ、“熱い”夏、寝不足の夏を有り難うと言いたいですね」

 世界が記憶し、記録した夏でもある。

「ワイド特集 やがて哀しき『リオ五輪』」より

週刊新潮 2016年8月25日秋風月増大号掲載

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