ズワイガニから松阪牛まで! 豪華すぎる学校給食のメニュー一覧(1)

社会週刊新潮 2016年7月14日号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

 かつては不味い食事の代名詞のように言われていた学校給食。その味が今、劇的に向上しているという。ふぐや松阪牛、ズワイガニ、松茸ごはんまで登場し、米や出汁の質にまで徹底的にこだわる自治体も現れた。大人には信じられない、現代っ子の給食事情をご覧あれ。

 ***

 いま学校給食が、劇的なまでに美味しくなっているのをご存じだろうか。

 戦後すぐに広まった脱脂粉乳に、素っ気ないコッペパン、カチカチに固いくじらの竜田揚げ。「牛乳、パン、五目豆」の組み合わせなど、いったいどう食べればいいのかわからない献立……。かつての学校給食は、不味い食事の代名詞と言っても過言ではなかった。それがここ数年、急激に変貌を遂げているのだ。

「給食は美味しい! 現在の給食には、かつてのようなイメージはまったく当てはまりません」

 そう断言するのは、全国各地の小中学校で400以上の給食を食べ歩いてきた、学校給食研究家でジャーナリストの吉原ひろこ氏である。

「むかしは、栄養価を数値的に満たすことに主眼が置かれがちで、そのために奇妙な献立が多く見られたのも事実です。しかし、いまはまったく違います」

■“ミシュランコラボ”給食も

ズワイガニ(イメージ)

 目をひいたメニューをいくつか並べてみよう。

 長崎県佐世保市では、特産のふぐをつかった「ふぐの唐揚げ」や「ふぐ雑炊」が出されている。三重県松阪市では、松阪牛が献立にふくまれている。北海道では「いくら丼」。鳥取県では「ズワイガニ」が一人につき一杯。兵庫県には「松茸ごはん」を提供した学校まである。また、千葉県柏市の柏の葉小学校では、『ミシュランガイド』で一つ星を獲得している日本料理店「鈴なり」とコラボレートした給食が提供されたこともある。そのときは献立に、「柏産コシヒカリ」「サワラのごまみそ煮」「カブのすり流し豆腐団子汁」などが並んだ。ちなみに、柏のカブは全国一の収穫量を誇っている。

 上に並べたメニューは地場産の素材をつかった、地産地消がテーマのイベント感の強い献立で、ハレの日のための「特別な給食」ではある。かといって、それらが毎日提供されている給食と乖離しているかというと、とんでもない。吉原氏が語るには、近ごろは、

「1日平均、1人あたり200円から230円くらいの予算でこしらえる、ふつうの給食の実力」

 がすぐれており、

「近年の給食の日常的メニューの圧倒的な底上げには、眼を見張るものがある」

 というのだ。大人たちが知らぬままに、子どもたちは毎日、美食漬けになっているというのである。いま給食に、いったいなにが起こっているのだろうか。

■アメリカの事情を優先で、「うどんとパン」の組み合わせ

 そのわけを解き明かす前に、そもそも「給食」がいつから、どのように普及していったのか、歴史を振り返りたい。すると、いくつかの転機がみえてくる。

 給食発祥の地は、山形県鶴岡市だといわれる。当初は貧しい子どもたちを救うのが目的で、それが全国に広まったのだという。具体的には、昭和4(1929)年に発生、拡大した大恐慌の際、欠食児童を救う重要な施策として普及した。

 そして戦後、あの脱脂粉乳が登場する。昭和27(1952)年には、アメリカから寄付された小麦粉を使用した、いわゆる「完全給食」が、全国の小学校で実施されるようになった。だが、これはアメリカで余った農産物を消費するのが主たる目的であったため、「うどんとパン」といった、栄養が偏った珍妙なメニューが登場したのである。結局、このアメリカの事情を優先した同国発の給食は、大きな影響を持ちつづけることになる。

 だが、転機が訪れる。

「一つは米飯給食のはじまりです。それまでの給食はほとんどパン食ばかりでしたが、1970年代末から、お米の給食が積極的にとりいれられるようになったのです」(吉原氏)

 そもそもの目的は、日本の米余り状況を解消することだった。そしてむかえた第二の転機が、

「食育基本法が施行されたことです。いまの美味しい給食は、そこからはじまりました。それまでは、給食にミシュランの星付きシェフのレシピが採用されるなんて、想像すらできませんでした」(同)

 食育基本法が成立したのは平成17(2005)年のこと。その後、「食育」という言葉が定着したのも、戦後以来の給食の流れが変化したのも、この法律が施行されたことによる影響が決定的だった。吉原氏がつづける。

「食育基本法が施行されてからは、それまでの栄養士さんとは違って、食習慣などについて授業をおこなうことができる“栄養教諭”が、制度として導入されました。その結果、和食を中心にした献立が推奨されるようになったのです。そのころから、農家と連携して美味しいお米を導入したり、地産地消の考えをとりいれたりするなど、各校の栄養教諭たちがいい意味で競い合うようにして、新しいメニューを考案するようになった。そして、美味しい給食がどんどん生まれるようになってきました」

 食育基本法の登場によって、それまで栄養価の値ばかりを重視していた学校給食は、和食中心の献立になり、めきめき美味くなっていったのだ。

(2)へつづく

「特別読物 ズワイガニから松阪牛まで! 豪華すぎる学校給食のメニュー一覧――白石新(ノンフィクション・ライター)」より

白石 新(しらいし・しん)
1971年、東京生まれ。一橋大学法学部卒。出版社勤務を経てフリーライターに。社会問題、食、モノなど幅広く執筆。別名義、加藤ジャンプでも活動し、著書多数。近著に漫画『今夜はコの字で』(原作)。