「百田尚樹」直撃インタビュー 都知事選に出るのか? 出ないのか?

政治週刊新潮 2016年6月30日号掲載

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 読者の皆さんは、私がどこまで本気なんやろうかと思っているでしょう。そもそも、東京都知事選のことをツイッターに書き込んだのは6月17日のことでした。

〈東京都知事に立候補しようかと真剣に考えている。取り敢えず住民票を移して、生まれて初めて東京都民になるか〉

 正直いえば、この時は半ば冗談だった。だけど、書いたとたん、フォロワー(ツイッターの読者)やマスコミからの反響がもの凄かったのです。私のフォロワーは〈選挙に出たら投票します!〉とか〈応援しています!〉と熱心に書き込んでくれますけど、あくまで彼らはファンであって、その言葉を鵜呑みにはしていません。

 ところが、私の書き込みにマスコミまでもが即飛びついてきたのには驚きました。今日(6月20日)もTBSから取材を受けたし、朝日新聞や東京新聞など、次から次へと電話がかかってくる。〈立候補〉と書いただけで、「百田は本気なのか」と確かめに来るのです。確かに、私は、著書で地方自治のことも取り上げていて、地方議員のことをボロクソに批判した『大放言』(新潮新書)には、溜飲が下がったとの声が随分ありました。

 しかし、今回は私自身の話です。実は、昨年の夏にも大阪市長選挙で〈出ようかな〉とツイッターで書いたことがあったのですが、当時は、ほぼ無反応でした。たしかに出たとしても泡沫候補ですからね。ところが、今回は何十倍も反響があって明らかな手ごたえがある。

 思うに皆さん、都知事選挙に対して関心がとても高いのですが、一方で既存の政治家に飽き飽きしているんじゃないでしょうか。今、候補として名前が出ている人は、蓮舫さんに東国原さん、渡邉美樹さん……手垢がついている人ばっかりやし、何だかスケールが小さい。だから、今までとは違う「何か」を待望している。マスコミも、それを感じ取って、私のような者の「つぶやき」に騒いでいるのかも知れません。でも、そこまで気にするのなら都知事選挙でひと暴れしてもいいかなと考えてしまうんですよ。

百田尚樹氏

■自分の給料はゼロ、都議会議員の給与も半分に

 当たり前の話ですが、いちばん大事なことは、都知事になったらどんな仕事をするかです。これは私の持論でもあるけど、真っ先に行政改革はやらんとだめです。東京都は年間予算13兆円の巨大自治体ですが、それだけに金遣いが麻痺している。まずは、どれほどの無駄をしているのかを調べ、どこまで支出を削減できるのかを探り、民間に委託できるところがあれば出してゆく。

「血を流せ」と言うてるんだから、もし、私が都知事になったら、自分の給料はゼロです。生活費ぐらい自分で稼げるので1円も要りません。都議会議員の給与も高すぎるから半分にしてしまおうと思う。議会の大反発を食うのは目に見えてますが、これは譲れない公約にする。

 ご存じのように日本の財政は非常に厳しい。しかし、それ以上に深刻なのが、ほとんど赤字財政ばかりの地方自治体です。立て直すために、地方議員の給与を減らしたとしても焼け石に水かも知れん。それなら「隗より始めよ」で一番大きい東京都が真っ先に襟を正すべきやと思う。そうしたら、赤字に慣れきっていた地方自治体も皆ついてこざるを得ません。

■舛添前都知事の問題点は――「お金に汚いのはあきません」

 実際、『大放言』でも書いていることですが、立法府の国会議員と異なり、地方議員は大して忙しくない。メインは年に4回ある地方議会だけれど、全国平均で年間に約84日。まさにパートタイマーと同じ。ヒマでしょう? にもかかわらず、給与は政務活動費などを合わせると年1000万~2000万円をもらっている(註・東京都議会議員は議員報酬だけで1200万円)。欧米では地方の名士やリタイアした人がボランティアで議員をつとめるのが当たり前です。日本みたいに地方議員が親子二代三代と続いているケースはまずありません。しかも、給与があっても日本に比べて非常に少ない。こんなことを“放言”したら「金持ちしか地方議員になれんのか」と批判する人がいますが、日本では逆に、地方議員に当選すればリッチになれるんです。

 今回、辞任した舛添要一氏の問題も実はそこにある。もう辞めた人のことは言いたくないけど、「都市外交」と称してファーストクラスで出張し、一流ホテルのスイートに泊まって億単位の公費を使いまくっていたのはご存じのとおり。ぜんぶ都民の税金です。それを批判されると“知事がビジネスホテルじゃ恥ずかしいでしょう”と弁解する。税金を浪費して恥じないこの感覚がダメなのです。

 何より愕然としたのはあの往生際の悪さ。最後は、周囲の説得によって詰め腹を切らされましたが、ホンマに情けない。お金が好きなのはいい。はっきり言って私も大好きです。だけど東京のトップがお金に汚いのはあきません。

 そもそも舛添さんがやる「外交」なんて意味が分からなかった。批判を浴びるきっかけになったのは、韓国の大統領を訪問して韓国学校の用地貸与(新宿区)を約束して帰って来たことでした。でも、自治体の首長が、反日発言を繰り返す国の大統領に便宜供与する理由はありません。それでなくとも、東京都は待機児童解消のための施設用地の確保に四苦八苦しており、予定地は新宿区も継続使用を求めていたのに、強引に進めようとしたのです。もちろん、私が都知事になったら、学校用地貸与の話も即撤回です。

■ぎりぎりまで考える

 とまあ、ここまで偉そうなことを言ってみたけど、正直、私なんかが立候補しても都知事になれないことは分かってます。もし、当選したら東京都民も終わりやと思う(笑)。

 それでも、東京都のトップを選ぶ選挙は、打って出るだけの意味があると思っています。先述した財政もそうだけど、安全保障や社会保障など、日本は未曾有の危機に瀕しています。地方自治体の東京都がそれらに取り組んだとしても大した効果はないかも知れませんが、都知事の椅子を争う戦いは日本中が注目するのです。だから、私が都知事選に出馬し、有権者に訴えかけることで、耳を傾けてくれる人が増えるかも知れない。当選するとかしないは問題じゃない。

 ご存じのように、私は日本の近未来を寓話にした『カエルの楽園』(新潮社)を出版しました。発売から4カ月たってやっと産経新聞が書評を載せてくれましたが、大マスコミはほぼ黙殺。自分たちの考えと相容れないからでしょうか。

 しかし、不都合なことに日本を取り巻いている様相は、残念ながら本のストーリーそのもの。アメリカの大統領候補が金を払わなければ日本から基地を撤退させると迫り、中国の軍艦があからさまに領海を侵犯しはじめている。本当に「予言の書」になってしまうのではないかと心配ですが、マスコミが紹介しないのに、じわじわ売れて20万部を超えています。

 このことから分かったのは、最近の言論は“戦争法案反対”とか声の大きい人ばかりになびき、大勢が思っていることが公に出にくいということです。東京都知事になった人が「都市外交」と言うのなら、相手におもねるのではなく、しっかりと日本の立場から物が言える人でないといけません。私が立候補するとしたら、そこに風穴を開けられるのではないかという思いはある。

 とにかく、今はツイッターに寄せられた反響や、マスコミの反応をもっとよく見てみたい。都知事選は「後出しじゃんけん」が有利だと言われているでしょう。有力候補者でもなかなか態度を明らかにしない。だから、告示日ぎりぎりまで考えるつもりです。

 ちなみに、うちの嫁さんは大反対ですよ。アホなこと考えるなってね。

「特集 いい顔が見つからない『東京都知事選』の陰謀――私がなったら給与はタダで都知事をやる! つぶやいたら大反響! 出るのか? 出ないのか? 『百田尚樹』直撃インタビュー!」より