東郷平八郎、山本五十六も通った“海軍料亭”が焼失 131年の歴史

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 歴史がまた一つ消えてしまった。かつての海軍御用達だった、神奈川県横須賀市にある老舗料亭「小松」が、5月16日、火事で全焼した。地元記者によれば、

「1階部分から火が出ているとの通報が通行人から17時過ぎに入りました。現場の真横が消防署であるため、すぐさま消火活動にあたったのですが、鎮火は翌朝7時過ぎ。現場に面した国道16号線は4時間も通行止めになるほどの騒ぎで、のべ1300平方メートルが焼け落ちました」

 料亭「小松」は日本海軍の中枢機関「鎮守府」が横須賀に移された翌年、1885年に創業。東郷平八郎や鈴木貫太郎、山本五十六など、錚々たる面々が通ったことで知られる。太平洋戦争中は、トラック諸島にも出店。軍人の間では小松の松から、「パイン」の名で呼ばれ、現在は横須賀に基地を置く海上自衛隊の幹部たちに親しまれていた。

 元防衛大学校教授で歴史学者の平間洋一氏の話。

「建物は2階建で、1階部分には6畳ほどの個室がいくつかあり、山本五十六が使った長官部屋と呼ばれる座敷がありました。また、壁に訪れた歴代の著名な軍人たちによる掛け軸が飾られた部屋も。2階には大広間があり、芸者が踊るための舞台もありました。昨年の130周年パーティーには小泉純一郎元総理も出席していましたよ」

 地元出身の小泉氏が厚生大臣時代に書いた墨筆も額装され、飾られていた。

「04年に別館部分をマンションに建て替え、1階を日本料理店にし、現在、3代目に当たる女将さんが切り盛りしていました。今は、こちらを中心に営業していて、火災でなくなった料亭の方は、予約が入った時に、月に数日開けるだけでした」(前出の地元記者)

 定休日ということもあり、火災当日、店内は無人。煙を吸った隣人が、軽傷だけで済んだのは不幸中の幸いだった。

週刊新潮 2016年5月26日号掲載

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