共産党はトランプ賛成?“在日米軍撤退”なら中国が尖閣を占領する

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 インテリ層が必死でこき下ろしてもどこ吹く風、「アメリカは貧しいんだ!」とぶちあげると、満場の支持者がさらにヒートアップする。そのドナルド・トランプ氏が、国外で槍玉に挙げるのが日本だ。在日米軍の駐留費の全額負担か、さもなくば撤退。それが現実に起きてしまったら――。

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日本を槍玉に挙げるドナルド・トランプ氏

〈日本や韓国はアメリカの世話をしないといけない。多分するね。もし、世話をしないというのならアメリカは手を引く必要がある。常に手を引く用意をしていないとダメなんだ〉

 大統領候補に確定した後の5月4日にもインタビューで、トランプ節を炸裂させたご当人だが、どこまで本気で言っているのだろうか。単なる客寄せの口上と思っていたら大間違いと指摘するのは、在米ジャーナリストの古森義久氏だ。

「トランプ氏の主張は昔から一貫している。第1次湾岸戦争前の1987年、ワシントン・ポストなどに“ペルシャ湾の治安を、アメリカは人命と金をかけて守っている。日本はなぜ代償を払わないのか”という全面広告を載せた人物がいる。日本にとっては痛い内容ですが、それがトランプ氏だったのです」

 となれば、「トランプ大統領」が誕生した暁には、難題を日本に突きつける可能性は大である。

 ちなみに、在日米軍の年間費用は5850億円。これに対して、日本は基地従業員の給料など四千数百億円を負担しており、その割合は74・5%にのぼる。

「実際はこれだけではありません。他に沖縄の基地対策費などを合わせると政府は約7000億円を拠出している。これ以上となれば、米軍人の給与や作戦費用まで負担することになりますが、両国の負担割合は半分ずつという試算もあり、トランプ氏の理屈ではさらに7000億円を出せということになる」(ワシントン特派員)

 外務省は今ごろになってパイプ探しに血眼になっているが、浮足立っているのは安倍政権だけではない。たとえば、安保も自衛隊も憲法違反と主張して憚らない共産党の山下芳生書記局長は、3月の会見でこう話している。

〈トランプ氏の言っている方向と意図は違うが一致する点がないわけじゃない〉

 社民党はどうか。「あくまで個人的見解」としながら、機関紙「社会新報」の田中稔編集次長が言うのである。

「そもそも日本だけで自国を防衛することは可能なはず。米軍が出ていってくれるなら“トランプ大統領”はウエルカム。福島(瑞穂)さんも同じ考えのはず」

 敵の敵は味方。意外なところに応援団がいたわけだが、もし、である。トランプ政権が生まれ、日米が決裂。そして在日米軍が撤退となったら何が起きるのだろうか。

在日米軍が撤退となったら何が起きるのだろうか

■撤退すれば「占領」の過去

「その時点で中国が尖閣諸島を取りに来るのはまちがいないでしょう」

 そう指摘するのは元海将で金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏だ。

「尖閣海域で石油の埋蔵が報告された70年代から、中国は自国領だと主張している。だから彼らにすれば治安出動の名目があれば十分です。そして、米軍撤退は“尖閣、台湾に関し、米国は関与しない”というメッセージと受け取る。撤退した翌日に占領されてもおかしくありません」

 絵空事でないのは、中国の行動を振り返れば容易に分かる。73年に米軍がベトナムから撤退すると即座に西沙諸島全域を手中に収め、80年代にソ連がカムラン湾から撤退すると南沙諸島に進出、92年に米軍がフィリピンから撤退すると南シナ海南部に。そして、最近になってパラワン島沖の環礁を勝手に埋め立てたのはご存じのとおりだ。

「尖閣諸島が占領されたら、日本は武力攻撃事態と認定し防衛出動を下令します。しかし、艦船や飛行機を撃退できても相手国の領土にある眼(レーダー)までは米軍でないと破壊できません。憲法解釈上、不可能なことを担っているのは米軍だからです。戦いは防衛装備が上の日本が、中国軍を追い返したとします。しかし、相手も部隊を増派して何度も奪い返しに来るはず。防御しかできない自衛隊はいずれ疲弊するでしょう」(伊藤氏)

 島を独力で守りたければ憲法改正しかないのか。

 太平の眠りをさます金髪鬼、その一喝で夜も眠れず。

「特集 ムリが通れば『安保』が引っ込む? 露悪家『トランプ』有言実行の吉凶検証」より

週刊新潮 2016年5月19日菖蒲月増大号掲載

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