ムヒカ前大統領来日で注目を集める「反使い捨て消費社会」 「拾い物」「貰い物」で生活する大学教授の幸福度

社会2016年4月28日掲載

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■ホセ・ムヒカ前大統領の「胸をうつ言葉」

「世界で一番貧しい大統領」として、日本でも一躍知られるところとなった南米ウルグアイの前大統領、ホセ・ムヒカ氏(80)。先ごろの初来日では、約一週間の滞在中に、東京、大阪をはじめ各地をめぐり、独自のムヒカ哲学を披露。世代をこえて大きなインパクトを与えたその哲学とは――。

“貧しい人とは、豪華な暮らしを保つためだけに働き、次から次へと物を欲しがる人のことを言うのです。貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲しがり、いくらあっても満足しないことです”

“物を消費しつづけ、買いつづけることは、資本主義の「美しき悲劇」である”

 など、使い捨て社会の歪みを指摘し、持たざることの幸せを説いている。

 ムヒカ氏の言葉に、日々の自分を省みた日本人も多かったに違いない。関連書籍は軒並みベストセラーとなり、ムヒカ効果は続いているようだ。

■日本にも「ムヒカ」がいた

 じつは、日本にも、「買わない」「捨てない」「不用品は遠慮なく貰う」をモットーに、反使い捨て消費生活を実践している人がいる。世界的にも知られた言語社会学者で、慶応大学名誉教授の鈴木孝夫氏だ。その生活ぶりは徹底している。拾った物を修理して使うのが楽しみで、腕時計は半世紀以上の愛用品だし、貰ったジャケットは繕いながら丁寧に着続けている。

 単なる倹約家ではない。著書『人にはどれだけの物が必要か』のなかで、こうした生き方がもたらす良い点を語っている。

「第一にゴミをほとんど出さずに済む。次に物を買わないと、お金が余り要らなくなる。したがって余分なお金を得るために、無理してまで働かなくてよいのです。その結果、自分が本当にしたいことをする時間がたくさん生まれる」

 まさに「日本のムヒカ」だ。さらに、最も重要な意義があるという。それは、人間が生きるために消費するエネルギーの総量を抑えることができるということだ。地球環境がきわめて危機的な事態に至っているいま、使い捨て・超消費社会などはもってのほか、というのが鈴木氏の持論なのだ。

■できるだけ少ないエネルギーで、いかに最大の幸福を得るか

 しかし一度便利な生活を味わってしまうと、我慢するのは難しいのでは? そう訊ねてみると、鈴木氏は「いえ、私も我慢するのは嫌いですし、悟りを開くわけでもないのですよ」と言う。どういうことだろうか。

「幸福追求の仕方と目標を変えるということです。日本には『お蔭様』とか『もったいない』という言葉がある。つい半世紀前まで、日本人はまだ使える物、食べられる物を捨ててはもったいないという感覚で生きていた。幸福や満足は大量消費の先にあるのではなく、意外に別の次元にあるのではないか」

 じつは今日からでも始められることがあるという。例えば、買い物に行くときビニール袋を持っていく。水がもったいないのでクルマは洗わない。ペットは残飯で飼う。裏紙を捨てずに使うetc.そして鈴木氏は言うのだ。

「どれも、私が地球を救っているのだと思っています。これ以上の幸せはありませんね。自分を精神的優位に置くことで、人生はすごく楽になります」

デイリー新潮編集部