「五輪マラソン選考」が一発勝負にならない意外な理由がある

スポーツ週刊新潮 2016年3月24日号掲載

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 4年に一度の恒例行事となった感のある、「五輪マラソン」のゴタゴタ選考。今年も女子マラソンで物議を醸したが、なぜ毎回、批判を浴びて尚、わかりやすい「一発勝負」が採用されないのだろうか。

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 田中智美選手が日本人トップの2位でゴールした、3月13日の「名古屋ウィメンズマラソン」。これでリオ五輪の男女選考レースは終わり、17日の日本陸連理事会で代表が決まる。

 1月の大阪国際女子マラソンで優勝した福士加代子選手が「名古屋も出る!」と吠えたように、混乱の元は、代表3人に対し、選考レースが4つもあること。このため、選手は好結果を残しても、自力のみでは代表入りを決められないし、また、コースも天候も展開も異なるレースの結果を比べられるという「不条理」を味わわなければならないのだ。

「日本は昔から『複数レース選考』を採用しています」

 と述べるのは、長年選考を主導してきた、澤木啓祐・元陸連副会長である。

「最大の利点は、開催時期がある程度の期間に亘っていること。体調やコンディションを調整しやすく、ベストの状態での出場が可能で、選手にとっては最も有利なやり方なのです」

 この他、

・さまざまな観点で選手を評価できる

・一度の大会でミスがあっても、次のチャンスがある

 などが、陸連が“公式発表”する「メリット」である。

 一方で、

「いや、むしろ大きいのは、陸連による大会の主催者への異常な配慮なのです」

 と喝破するのは、陸連の元理事だ。

「『一発勝負』にすべきだという声は前から陸連に届いていました。しかし、幹部は“これまで築いてきた新聞社やテレビ局との関係の方が大事だ”と堂々公言していましたよ」

■求心力ゼロ

 日本のマラソン大会は、ほとんどが主催者に新聞社や放送局が入り、大々的に報道する。しかし、選考レースがひとつになれば、それ以外の大会の注目度はぐっと下がり、関わるメディアは大損。逆に陸連も、得られるはずだった放映権料などにマイナスが生じる。

 今回の男女選考レースの中継局を見ても、NHK、日テレ、TBS、フジ、テレ朝と、主要局がまんべんなく揃うのは偶然だろうか。

「僕は、一発勝負が皆納得の方法であると思いますが」

 と述べるのは、ソウル・バルセロナ両五輪4位の中山竹通氏。

「それを言い出したら、陸連は主催者から猛反発を受ける。それを抑えられるのは、カリスマ的なリーダーしかいませんが、現在の陸連の顔ぶれを見ても、実績のない人ばかりで、思い切った改革を打てる求心力を持った人はゼロ。選考の改善など望めないのです」

 と、半ば諦めの弁である。

「新聞、テレビの罪は重い」

 とは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏だ。

「陸連が自分たちの“縛り”で選考方法を変更できないことがわかっているくせに“不透明だ”と、批判だけはするのです。彼らにその資格はないと思いますよ」

 かくして“利害関係者”が茶番を演じている間に、かつてお家芸だった日本のマラソンは、世界から取り残される一方。いっそリオで大惨敗してもらった方が、バカげたしがらみから解き放たれる、良いキッカケになるかもしれないのだ。

「ワイド特集 春色の時限爆弾」より