長女「貴子」の自民党移籍を決断した「鈴木宗男」の目算

政治週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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 友だちにするのに好ましい存在。『徒然草』はその一つに、「物くるる友」をあげる。これを政党の立場に置き換えるなら、さしずめ「票をくれる人」である。安倍首相は先月末、今夏の参院選などで「新党大地との全面的な選挙協力の実現」を号令。鈴木宗男代表(68)はこれと連動し、民主党所属である長女・貴子代議士(30)の自民党移籍を決断したという。その目算とは。

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民主党大会に議長として出席した貴子氏

 金田一春彦著『ことばの歳時記』における「2月3日」の項には、こんな挿話が紹介されている。

 豆をまく男の「鬼は外、福は内」がままならない。鬼が踵(きびす)を返して聞き返す。

「一体、どっちなんだ、早く言ってくれ」

 自民党からは、あたかも福のような扱いでスカウトを受けたのが、他ならぬ貴子氏である。どういうことか。

「彼女の地盤である根室や釧路では、景気が冷え込んでいて、特に建設業者が悲鳴を上げている。同時に 『鈴木離れ』も進んでおり、与党の一員となることで、“地元への利益誘導を”と宗男さんが考えてのこと」

 と明かすのは地元政界関係者のひとり。永田町関係者が後を受けて、

「鈴木父娘はこれまで、与党と野党を天秤にかけて趨勢を見守ってきた。それがここにきて、“野党共闘が実を結びそうにない”と見限ったということ。とりわけ共闘の輪のなかに共産党が入っていることに対し、彼らは拒否反応を示しているんだ」

 事実、昨年12月28日の夕刻、官邸に安倍首相を訪ねた宗男氏の発言を振り返って、こう続ける。

「2002年に国会で袋叩きにあっているころ、共産党が外務省の極秘文書を元に、“鈴木宗男が北方領土交渉で悪巧みをしている”と激しく追及した因縁は消えないまま。“自分たちは絶対に間違わないという考えの共産党とは組めないし、歯牙にもかけていない”と、安倍さんに最大の協力を約束したわけだ」(同)

■「有難いこと」

 先の衆院選で鈴木父娘は、民主党と組んで自民党と対峙した。したがって彼らのことを「一体どっちなんだ」とあげつらう声がないわけではない。

「05年8月の新党大地立ち上げ以降、反権力を掲げてやってきたのが宗男さん。そのうえ大地は反原発、反TPP、反消費税を唱えている。にもかかわらず、自民党に接近するのは節操がないと指摘する『鈴木ファン』がいるのは事実」(同)

 まず、この点を宗男代表に質(ただ)すと、

「私は自民党時代でも反権力、体制内改革を訴え、抵抗勢力と言われました。政治は生き物であり、その折々で是々非々の判断をすべきだと考えます」

 次いで、自民党からの引き抜きの有無を問うと、

「『引き抜く』という表現に違和感を覚えます」

 とは言うものの、

「鈴木貴子代議士に対し、様々なところから期待感、将来性を評価されているならば有難いことです」

 と相好を崩す。さらに、共産党との埋まらぬ溝について聞くと、今度は貴子氏がこう断じるのだ。

「領土問題ひとつとっても、日本共産党は全千島の返還を訴えている点など到底納得、容認できる話ではない。共産党を含めた野党共闘そして連立政権、国民連合政府の先に、私が考える日本はありません」

 ところで、公民権停止期間という“喪”が来年4月で明ける宗男氏は、どう打って出るのか。

「そこから一番近い参院選の全国区で出馬する構想がある」(先の地元政界関係者)

 手ぐすね引く宗男氏を鬼は笑うだろうか。

「ワイド特集 崖っぷちの歩き方」より