株価不安の今「投資信託」を選ぶなら

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 年初から続く、株価の下落傾向。日経平均は、1月18日には終値で1万7000円を割り込み、昨年9月29日以来の安値水準となった。翌19日には戻したものの、ドキドキする日が続く。

「いつまで続くぬかるみぞ、とばかりに、投資家心理は冷え込んでいます。このまま下がり続けるのではないかとの懸念が広がっているのです」(証券アナリスト)

 株式に安心を求めることが難しくなっている状態での資産形成、資産防衛─―。

「長期的な視点に立てば、投資信託に注目する必要があるでしょう」(同)

 その投信、昨年の成績はどうだったのか。

「野村総合研究所の調査によれば、投資信託の資金流出入額は、約13兆円の流入超。昨年末の純資産残高は98兆円弱となり、3年連続で最高額を更新しました」(経済部記者)

 ところが、その運用成績は4年ぶりにマイナスになったという。

「昨年は日経平均が9%上昇したこともあり、日本株投信は分配金再投資ベースで平均7%のプラスでした。ところが、海外株式が10%、海外債券が9%のマイナス。国内の投信市場は、全資産の6割が海外資産の運用ということもあり、日本株のプラス分でも海外での損失をカバーしきれなかったのです」(同)

 株価好調の昨年でさえ運用損となると、今年の投信はもっと厳しいのでは……とさらなる不安に駆りたてられそうだが、

「以前に比べれば、投信の商品は多岐に亘っています。商品を選びさえすれば“買い”なのです」(経済ジャーナリストの田部正博氏)

■今こそ狙い目の投信は

「株価の先行きに不安を覚えている向きには、ベア型のETF(上場投資信託)がおすすめです」(同)

 ベア(インバース)型とは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数が下がれば、ファンドの価格が上がるという仕組みのこと。ベアは“熊”で、熊が攻撃する時に前足を上から振り下ろす、つまり下落相場で“攻撃”することから付けられた。逆に指数上昇に連動して価格が上がるタイプをブル(レバレッジ)型と呼ぶが、こちらは雄牛が角を突き上げて攻撃することに由来する。

「例えば、マイナス1倍のベア型ETFだと、日経平均が10%下がると、ファンドの価格は10%上昇します。このタイプの商品に投資することで、資産の目減りを抑えることができるのです」(同)

 日経平均が底を打つまでは持ち続けることができるし、反転して上昇基調になれば売って利益を確保するなり、今度はブル型に乗り換えるなりすればいい。

「ただしダブルベア、トリプルベアといったリスクの高い商品は見送ったほうがいいでしょう」(同)

 でも乱高下に対応するのが難しい、利回りは低くても長期的に資産防衛をしたいという向きには、公社債投資信託が狙い目だ。

「公社債投信は、国債や地方債といった公共債や、社債などの事業債を中心に運用するものです。利回りは低いですが、元本割れしないことを目的に運用されるため、資産防衛のための長期保有には一番いい。また株式への投資は一切ないので、株価の乱高下を気にする必要もありません」(同)

 逆に、短期である程度の利益を確保しようというなら、高配当の日本株に絞った投信を検討するのもいい。

「高配当を実施する企業ばかりを集めた“高配当利回り株”投信です。配当金はすでに決まっていますから、株価が下がると相対的に高利回りになり、投資金の目減りを回避できる。3月決算企業の場合、6月か7月には配当金が支払われるので、その時期までの短期で勝負するという方法もあるのです」(同)

 乱高下の時こそ一発勝負! という考え方もあるが、安定した資産運用なら、やはり投資信託か─―。

週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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