「百寿者の楽園・サルデーニャ島」のライフスタイル 1日の摂取・消費カロリーが“ぴったり一致”

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 イタリア・サルデーニャ島に暮らす人々は、100歳まで生きる確率が世界でも突出して高いという。長寿の秘密はどこにあるのか――。2012年にギネス世界記録「9人きょうだいの合計年齢818歳」に認定された「メリス家」の皆さんを始め、島で暮らす人々の生活を取材した。

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車道にあふれるヤギ……どこも家畜だらけのサルデーニャ島

 サルデーニャの温暖な気候ゆえだろう、10月半ばだというのに、畑にはトマトやナス、インゲン豆などが元気に育っていた。雑草をむしり、作物を収穫し、地面に鍬を入れ、クルミの実を穫るメリス家の次男・アドルフォさんの姿は、とうてい92歳には見えない。

■105歳の恥じらい

 畑まで4WD車で同行してくれたアドルフォさんの娘婿、マリオ・ライさん(52)が、この6月に107歳で亡くなったメリス家の長女・コンソーラさんの最後の様子を語ってくれた。アドルフォさんの妻・デリアさん(78)によれば、

「コンソーラはご主人が羊飼いで、肉屋もやっていた。彼女自身は13人の子供を育てながら、畑仕事やマッサージ師をしていました」

 とのこと。マリオさんの話をそこに継ぐと、

「コンソーラの葬儀には、ペルダズデフォグじゅうから1500人が訪れました。彼女は103歳で、甥っ子の結婚式に付き添って出席し、105歳までひとりで歩いていました」

 次女のクラウディアさんから下は、イタリア語を話したが、コンソーラさんはサルデーニャ方言しか話せなかったという。それでも、

次男のアドルフォさん(92・左)と次女のクラウディアさん(102・右)

「ジャーナリストが来ると、いつも明るく皮肉の利いた冗談を言っていました。最後の2年は、2人の娘が亡くなるなどして、その葬儀にもみな出席したものだから、精神的なダメージが大きかったようです。それでも亡くなる1カ月前まで、周囲が言うことをすべて理解し、すぐに返事ができました。105歳のとき、シャワー中にすべって転ぶのを娘たちが心配し、介助を申し出たときも、裸を見せるのが恥ずかしいからと断った。そういうプライドも、元気の秘訣だったのではないでしょうか」(同)

■カロリー量がピタリと一致

 日本にも百寿者は少なからずいるが、元気なケースはけっして多くない。なぜコンソーラさんは107歳まで元気でいられたのだろうか。この地域の長寿を研究してきた、オリアストラ遺伝子研究所のマリオ・ピラストゥ所長に尋ねた。

「コンソーラさんは最後まで痩せていました。彼女の食生活はヤギの乳とパンの朝食にはじまり、ミネストローネと少しの果物で栄養をとっていた。そして、家事のためによく動いた。こうして、摂取したカロリー量と消費したカロリー量が、1日の終わりにピタリと一致しました。これは100歳の老人のほとんどに重なる特徴です。肉を食べるのは昔と同じように時々。スピリッツ系の強いお酒など飲みません。そして、家の裏の階段を下りてヤギ小屋に行き、水をくみに泉に行き、毎年、相当な重さの木の実を拾って運んだ。健康的に食べて、運動する。それこそが彼女のライフスタイルでした」

 ピラストゥ所長は、もうひとつのことも強調した。

「彼女は最後まで、自分が結婚生活を送り、子育てをした家で、子供や孫に愛情を感じながら生活しました。また、地域の人たちとの交流も重要です。自分と同世代、あるいは若い世代と明るく触れ合うなかで、脳が活性化するからです。実際、コンソーラさんの記憶は最後まで、大昔の出来事から最近のことまで、すべてが明瞭に残っていました」

 アドルフォさんの娘婿であるマリオさんの話に戻ると、彼自身の祖父母も長生きだったという。

「祖父は98歳、祖母は97歳で亡くなりましたが、最後までしっかり歩けて、畑仕事もして、コロッと亡くなったんです」

 そう語るマリオさんだった。

「特集 地中海に浮かぶ『百寿者の楽園』を現地取材! 『サルデーニャ島』で見つけた元気な100歳の食事と生活」より

週刊新潮 2015年11月12号掲載

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