「ドクター秋津」のがんになるのはどっち? 人生はすなわち二者択一の積み重ね!――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)

ライフ 週刊新潮 2015年7月23日号掲載

  • ブックマーク

■「生存率数%」との闘い

 次はがん検診の問題です。

【Q7 「すい臓がん」を少しでも超早期発見したいなら、「腫瘍マーカー」か「PET検査」か?】

 すい臓がんは、診断と治療が極めて困難なことで知られています。原因も未だよく分かっていない。これといった明確な徴候や自覚症状がなく、発見された時には手遅れであることがほとんど。ステージIVの5年生存率は、わずか数%です。

 統計学的には原因として喫煙が考えられています。明確には断言できませんが、おそらくはアルコール性すい炎(長期にわたる飲酒による慢性すい炎)もすい臓がんを引き起こすリスク・ファクターになっていると推察できます。「お酒を飲んだ翌日、決まって、油っぽい便の下痢が続く」という人は、アルコール性すい炎の“サイン”である可能性が高いので、生活習慣を見直したり、腹部や背中の痛み、体重減少などが伴う場合は、すい臓がん検査を検討した方がいいでしょう。

 とはいえ、すい臓は体の最深部にあるため、医師にとっても、この臓器のがんを超早期に発見するのは至難の業です。肝臓がんならエコー(超音波検査)で見つけることもできるのですが、すい臓はその奥なので映りにくいのです。

 そこで取り上げたいのが、がん検診の「腫瘍マーカー」という検査方法です。血液や尿の中に、がん患者が持つ特有の成分がどれだけ含まれているかを調べ、がんを特定しようとするものです。しかし欠点もある。まず腫瘍マーカーは、例えば胃カメラを使った胃がん検査と比べると、著しく信頼度が低い。「この数値なら、がん。この数値なら大丈夫」というシロクロをつけるための正常値と異常値の基準が曖昧なのです。またがんを見つける精度(感度)も低く、およそ30%ほどとされます。つまりたとえがんに侵されていても、がんと診断されるのは10人中、3人ということです。

 それでは、一度に全身のがんを検査できるとして、最近、注目を集めている「PET(陽電子放射断層撮影)検査」はどうでしょうか。検査薬を点滴すると、薬に含まれる特殊なブドウ糖が、がん細胞の増殖している場所に集まります。そこをCT装置で全身撮影すれば、その部分が赤く光るので、がんを見つけられるというものです。全身のがんを初期段階で見つけることが可能とされ、苦痛や負担も少なく、優秀な検査法と評価されています。他の検査法では見つけにくいすい臓がんや骨肉腫などの発見に高い効果を発揮するのも利点です。

 しかし問題もある。PETは任意型検診ですので、1回の費用が10万円前後と高額です。しかも、やはりすい臓がんとなると、ある程度、進行して大きくなったものでないと、見つけられないことが多い。つまり、発見できても根治が望めない場合が多いのです。

 そこで、もう一度、腫瘍マーカーに話を戻しましょう。この検査の精度は低いと申しましたが、その中にも優劣はあります。なかでも、すい臓がんの腫瘍マーカーの中で最も感度の高い「CA19-9」は信頼性が高い。進行性のすい臓がんなら、70~80%の精度で発見できるといいます。ただし、PETでも述べた通り、進行した段階で発見できても、治療的には意味がない。しかし、「CA19-9」なら、ごく早期のすい臓がんも見つけられる可能性があるのです。その精度は20%ほどと決して高くはありませんが、10人に2人は助かる見込みがある。しかも少量の採血や採尿で簡便に受診できますから、何度も受ければ、さらにこの確率を上げることができるでしょう。

 最初の検査で異常値なら、すい臓がんを疑ってすぐ次のステップに進める。また基準値内であっても、2回目、3回目の検査の値が前回より上昇していれば、体内で何か異変が起きている証拠で、すい臓がんを疑うキッカケを与えてくれます。超早期ですい臓がんを運よく発見できれば、治療の予後は格段に向上します。

次ページ:■ダイエットの罠

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[4/5ページ]