「ドクター秋津」のがんになるのはどっち? 人生はすなわち二者択一の積み重ね!――秋津壽男(総合内科専門医・秋津医院院長)

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■発症18%増のサプリの落とし穴

 さて、食事に気を使うだけではなく、足りない栄養素をサプリで補っている方もいらっしゃるでしょう。そんな方にこそ、次の質問にトライしてほしい。

【Q5 鉄分やβカロチンのサプリを「摂る人」と「摂らない人」、がんになりやすいのはどっち?】

 サプリ市場は約2兆円の規模だそうですが、過剰摂取には注意が必要です。鉄分不足の方は、鉄剤を摂取されているかもしれません。しかし、常習的に長期間飲み続けると、体で利用しきれない鉄分が肝臓にたまり、鉄肝症を引き起こす怖れがあります。これは過剰な鉄分が細胞のタンパク質やDNAを損傷させることを指し、肝臓がんのリスクを高めてしまう。

 緑黄色野菜に多く含まれるβカロチンも、抗酸化作用でがんを防ぐため、野菜不足の人の間では、このサプリが持て囃されました。とりわけ、喫煙者たちに、がん予防として奨励されたものです。

 確かに、文科省のがん疫学研究班の調査報告でも、βカロチンの抗がん作用は優に認められている。約4万人の男女を10年間にわたって調査したもので、うち大腸がんや肺がんを発症したグループと、発症しなかったグループの血液中のβカロチン濃度を比較すると、がんになった方のグループの濃度が低いことが分かりました。

 ところが、です。驚いたことに、これを製剤、すなわちサプリとして多く摂取した場合、体内の酸化物質が増えて、逆に細胞や遺伝子を傷つけ、がんを誘発することが判明したのです。

 これと同様に、タバコを吸う人がβカロチンのサプリを摂取し続けても、肺がんのリスクをさらに増加させるだけという衝撃の報告もあります。ヘルシンキ大学が喫煙者3万人を対象に行った試験で、食事とは別に、βカロチンのサプリを、毎日20ミリグラム、5~8年飲み続けたグループと、飲まなかったグループを比較しました。βカロチンが、喫煙者の肺がん予防に有効ではと期待され、実施されたものですが、フタを開けてみると真逆の結果が出て、関係者らは愕然とした。何と、サプリを摂ったグループの方が、肺がん発生率が18%も上昇したのです。

 我々人間が野菜を食べると、βカロチンは、体に必要な分だけ吸収され、それ以上は体外に排出される。この吸収率は約30%とされます。それに比べ、サプリによるβカロチン吸収率は80~90%と極めて高い。この余剰分が体内では逆に酸化物質=毒として働き、むしろがん発生率を高めるという、皮肉な結果を招くことが分かりました。

【Q6 「花粉症の人」「花粉症にならない人」、がんに気を付けなければいけないのはどっち?】

 この問いは最初に答えを明かしましょう。正解は「花粉症の人」です。

 花粉症とはアレルギーの一種であり、体の免疫機能が過剰に反応している状態です。つまり本来は無害であるはずの花粉を異物と誤認してしまい、体から追いだそうと鼻水や涙を大量に出してしまうわけです。

 重い症状の方は、これを緩和させようとして、花粉症の薬を服用します。症状は和らぎ、楽になりますが、誤認とはいえ機能している免疫を薬剤で抑え込むことになってしまいます。花粉症の薬を長く飲み続ければ飲み続けるほど、免疫機能は低下し、風邪など様々な病気にかかりやすくなり、最後には、がんの病魔に侵される危険も生じるのです。

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