部下の診断書をシュレッダーに、口止めに100万円…吉田羊主演「会社員」が描く“現代のホラー”
現代のホラー
放送開始前にはあまり注目されていなかったが、第3回まで放送された今、熱狂的な支持を集めるドラマがある。吉田羊が主演するNHK「会社員」(火曜午後10時)である。会社という組織に潜む恐怖と闇をリアルに描いた現代のホラーだ。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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妖怪や幽霊はいないことが分かっている今、この世で最も恐ろしい場所はどこか。それは会社に違いない。権謀術数が渦巻き、打算と保身が日常的にはびこっている。
この物語は現実味に満ちあふれているが、一方で恐ろしい。まるでホラーだ。ホラーらしく、劇伴音楽はない。代わりに不気味な効果音が随所で流れる。
主人公は50代の宮木英理子(吉田)。大手企業「KZGC」でコーポレートデザイン本部長だ。上司の常務・安西善之(尾美としのり)からは「次は役員だから」と言われている。昇進したら、女性の生え抜き社員では初の役員である。
英理子にとって、会社員として大事な時期である。現在は「LUCIS」というプロジェクトを担当しているが、失敗するわけにはいかない。そんなとき、若手社員・寺田一輝(加藤清史郎)が英理子のところへやってきた。診断書を持参していた。そこには「うつ状態」と書かれていた。
理由は分かっていた。寺田の先輩で、プロジェクトの中枢にいる山岸光(小久保寿人)が度を超して威圧的だからである。「寺田、おまえはどうせ失敗するんだから、自分で考えるな!」などと日常的に口にした。
英理子はすぐさま常務の安西に報告したものの、その言動は会社員そのものだった。
「山岸は優秀ですが、部下を萎縮させます。遅かれ早かれコンプラ案件になります」と懸念を口にした。それでいて、安西から山岸を切るかと問われると「LUCISにはまだ山岸が必要です」と答えた。会社員特有の矛盾である。
山岸には問題があるものの、自分が役員になるためには欠かせない人物なのだ。英理子は安西にこう宣言する。
「もし、この件で何か起こったら、容赦なく私を切ってください。私は会社のためにやるべきことをやります。駒になる覚悟はできています」
ポーズに過ぎない。本当は自分のためだ。だから、寺田の診断書をシュレッダーにかけてしまった。こんなことが露見したら、下手をすると労働基準局が動くから、会社にとっては最悪の選択だ。
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