部下の診断書をシュレッダーに、口止めに100万円…吉田羊主演「会社員」が描く“現代のホラー”

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どんどん恐くなる

 英理子は花形部署ではないメールセンターを見下していた。その責任者が、この物語で最も尊敬できる人物として描かれているところが面白い。これも物語上の意図なのだろう。

 それでも英理子は山岸を守ろうとする。昇進に山岸は欠かせない。山岸も英理子を役員にしたい。自分を引き上げてもらうためだ。動機不純な相互扶助だが、大抵の会社に存在する仕組みだ。

 そんな英理子の考えを一変させたのが、るりが入手した写真データである。山岸は寺田を盗撮していたうえ、無理矢理キスをしていた。山岸は「お互いに酔ってて事故っただけです」と言い訳したが、英理子は彼を切ることに決める。

 これで問題は解決に向かったかというと、そうではない。むしろ、ホラーの度合いは増し、さらに恐ろしい展開となる。常務の安西は山岸を左遷するどころか、経営戦略本部の課長に据えた。栄転である。英理子より上位の安西が引き上げようと思ったら、止められない。

 しかも、英理子は山岸が業績データを日常的に改竄していたことを知る。山岸は業績を捏造するパワハラ男で、決して優秀ではなかった。

「そもそも上が出してくる数字が正気じゃないんですから」(山岸)

 英理子は夢から現実に引き戻され始めた。そこで、また信じられないことが起こる。休暇のあと、行方が分からなかった寺田が、晴れやかな顔をして安西の部屋にいた。うつ状態だったとは到底思えない。何があったのだ。パワハラ自体、事実だったのか。

 会社は恐ろしい。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社。放送担当記者・専門委員として、1994年のNHK連続テレビ小説「春よ、来い」のヒロイン途中交代や、1999年のフジテレビ「愛する二人別れる二人」のやらせ問題などを特報する。2015年に毎日新聞出版へ入社し、サンデー毎日編集次長を務める。編集者としては「小池百合子都知事の真実」などを担当した。2019年に独立。元・放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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