「買収によって味が変わることはあり得ません」…資さんうどん「味が変わった」論争に専門家が断言 実際に「牛丼の味を変えた」吉野家は“倒産”の苦い過去
前編【なぜ「資さんうどんの味が変わった」の声は止まないのか 買収をきっかけにSNSで批判が激化する「地域のソウルフード」だからこそのジレンマ】からの続き──。“資さんうどん”というより“買収したすかいらーくホールディングス”が「味は買収前と変わっていない」と力説しても、SNS上では「味が何か違う」「味が変わってしまった」との指摘が絶えない。これに外食産業の担当記者は「指摘の真偽はともかく、既視感があるのは事実です」と言う。(前後編の後編)
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「2015年10月、ハウス食品はカレーハウスCoCo壱番屋を展開する株式会社壱番屋のTOB(株式公開買い付け)を発表し、12月に子会社化しました。するとSNSには『前と味が違う』との投稿が殺到する事態になったのです。さらにケンタッキーフライドチキンを運営する日本KFCホールディングスは24年、アメリカの投資会社カーライルの完全子会社となりました。この時も『味が変わった』、『前よりパサパサしている』、『小さくなった』という不評の声が相次いでSNSに投稿されたのです。いずれも資さんうどんで起きている現象と全く同じと言っていいでしょう」
記者は「こうした現象は大手の外食産業だけではなく、いわゆる老舗の名店でも似たことが起きます」と言う。
「私は東京の下町にある老舗のうなぎ屋さんと、東北地方の老舗そば屋さんの事例を知っています。どちらも古い店を改築して新しく綺麗にすると、たちまち常連客が『前と味が変わった』、『古くて汚かった時のほうが美味しかった』と口を揃えました」
フードサービスジャーナリストの千葉哲幸氏は「月刊食堂」(柴田書店)、「飲食店経営」(商業界)のライバル2誌の編集長を歴任したという経歴を持つ。
コストカットの先入観
外食記者歴40年というベテランの千葉氏は「買収によって味が変わることは、あり得ないと断言していいと思います」と言う。
「そもそも大手の外食産業は、全国津々浦々にチェーン店を展開し、『味が完全に統一された自社商品を消費者に提供する』という仕事を日々積み重ねています。私も何度も取材しましたが、オペレーションに心血を注ぎ、ノウハウを蓄積していく姿は本当に驚異的です。こうして得た豊富な経験を応用して味を統一させるので、買収前と買収後で味が変わることは考えられないわけです。ひょっとすると『全国展開するにあたり、大手は製造コストをカットするはずだ』という先入観を持つ消費者がいるのかもしれません。しかし、それも完全な誤解です。塩ひとつ、醤油ひとつとっても同じメーカーとの取引を続けるほどです。何しろ製造工程で不必要なコストカットを行い、肝心の味が変わってしまえば、消費者に逃げられてしまいます」
実際に味が変わって消費者の不評を買い、倒産に追い込まれたという苦い経験を持つ大手の外食産業がある。それは吉野家だ。1980年7月、吉野家は120億円の負債を抱えて東京地方裁判所へ会社更生法の適用を申請した。
千葉氏は「吉野家の倒産は私が大学生の時から駆け出しの外食記者になった間に起きたので、今でも鮮明な記憶として残っています」と言う。
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