【王将社長射殺】無罪のウラに通称“3刑判事” それでも検察が一縷の望みをかける“当日の居場所”
静まり返った法廷には、“無罪もやむなし”との雰囲気が漂っていた。10月16日、京都地裁101号大法廷。「餃子の王将」社長射殺事件で殺人と銃刀法違反の罪に問われた特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄被告(59)が、被告人席で法壇を見つめている。西川篤志裁判長が無罪判決を言い渡すと、法廷内では誰一人として声を上げることなく、静寂が続いたのだった。
厳格な立証を求める傾向
世間を震撼させた射殺事件が起きたのは2013年12月。王将フードサービスの大東(おおひがし)隆行社長(72)=当時=が犠牲になった理由がはっきりしないまま時間は流れ、13年を経てもなお、事件の全容解明どころか“沈黙のヒットマン”の背景も動機も分からずじまいである。
法廷で検察側が主張した、事件当日に関する筋書きは以下のようなものだった。
京都市山科区の王将フードサービス本社前で、田中被告が一人で大東社長を待ち伏せしていた。社長が出勤してきたときに銃撃し、盗難バイクで逃走する。現場に残されたたばこの吸い殻2本に付着していた唾液のDNA型が被告のものと一致。それゆえ、現場に第三者がいた、あるいは誰かが吸い殻を置いたとは考えられない。
加えて、逃走に使った盗難バイクと同じ日に盗まれたバイクからも、被告の存在が確認された。こうしたことから検察は、組織的、計画的な犯行であると判断し、被告の関与を示す直接証拠がないという厳しい状況ではあったが、関与を立証するために間接証拠を積み上げ、犯行の様態や情状関係などについて“きわめて悪質な犯行”と指摘。無期懲役を求刑していたのだが……。
「西川裁判長は、“いかなる依頼者や組織が関わり、どのようなルートで実行犯に指示命令がなされたか、犯行全体の実像が一切解明されていない”と指摘。そのうえで“被告が犯人であることに合理的な疑いがある”“犯罪の証明がない”と結論づけました」
そう語る司法記者は、そこまで踏み込むのか、と内心驚いたという。
「西川裁判長は56歳のベテランで、京都地裁第3刑事部、通称“3刑”の総括判事。刑事部は第1から第3まであり、3刑の法廷で無罪判決が出るケースが多い。これは捜査当局やメディアのあいだではよく知られている話です。裁判長は厳格な立証を求める傾向があるとされ、これまでいくつもの無罪判決を出してきた裁判官として知られています」
検察側の主張を一蹴
3刑判事による無罪判決の事例について、司法記者が続ける。
「今年の7月、14歳の少女と性的な行為をしたとして、不同意による性交の罪に問われ、拘禁刑6年を求刑されていた25歳の男性被告。そして一昨年11月に工具を盗んで窃盗罪に問われて懲役2年を求刑された50代の男性被告。それぞれに無罪判決を出しています。京都の前任地である大阪や奈良の地裁でも、二つの乳児死亡事件に無罪を出していました」
むろん、“無罪連発裁判官”といった悪名がついているわけではない。
「ですが無罪率が0.1~0.2%で推移していることを考えると、西川裁判長が無罪を出す数は多いと言えるでしょう。捜査当局にとっては、そんな裁判長と“鬼門”の3刑が揃っていたのが、今回の王将社長射殺事件の裁判でした」
なお、公判前整理手続きは20回以上行われ、
「その結果、検察側の立証の柱は、現場に遺留されたたばこの吸い殻と、事件で使われたバイクや被告と関連する軽乗用車について。この2本に絞り込まれたという経緯があります。争点は被告が実行犯なのかどうかという“犯人性”です。ですが正直なところ、昨年11月に初公判がはじまった時点から、無期懲役か無罪かは“半々”だと思っていた。捜査当局にも、同じ感触を洩らす人はいました」
西川裁判長は、そんなモヤモヤを一刀両断にした。
「吸い殻を田中被告のものと認定し、被告が実行犯であることを相当程度推認させるとしたものの、“被告のまわりにその吸い殻を手に入れることができ、被告を罪に陥れることも厭わない第三者が吸い殻を残した可能性は排斥できない”。つまり、吸い殻だけで実行犯と推認するには無理があるとの判断を示したのです。バイクや軽乗用車についても、同じ判断で検察側の主張を一蹴しました」
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