「人気企業ベスト10に入り、倍率100倍だったが…」 なぜ新聞社に優秀な人材が集まらなくなった? 「ポエム記事も増加」

国内 社会

  • ブックマーク

陰謀論すれすれの記事

 かくも氾濫するポエム記事について、

「おしゃれっぽい雰囲気を漂わせて、よく分からない感傷に浸っているのは、はやっている〈note〉の文体そのものですよね」

 そう語るのは、元毎日新聞記者でノンフィクションライターの石戸諭氏。〈note〉とは、誰でも自分の記事を配信できるプラットフォームである。

「普段から〈note〉に接している若い記者たちがこういうポエティックな記事を書きたいと望むのは、想像に難くありません」(同)

〈note〉ばかりでなく、現在の新聞はネットメディアから多大なる影響を受けていると石戸氏は指摘する。

「現在は動画全盛ですが、2010年代後半はテキストのネットメディアが隆盛でした。この時代に新聞がネットメディアの悪しき部分を取り込んでいきました。“数字が取れる記事を出す”という価値観です」

 ここでいう数字とは、アクセス数にほかならない。

「知人の記者が、事実こそあれど、解釈は陰謀論すれすれの記事を書いてネットに掲載したことがあります。“どうしてそんなことを書いたの?”と聞いたら“アクセスいいんです”と答えた。ついにここまで浸透したかと驚きました」(同)

 石戸氏はまた、記者が減っている現実に目を向ける。

「新聞社の地方支局は新人育成の場でもあります。僕がいた2000年代だと、新人は5年間くらい支局を転々としながら、事件、事故、選挙、議会などの取材をして、満遍なく経験を積んでいた。デスクや先輩記者が新人の原稿を丁寧にチェックして、ダメな原稿は書き直させていました」

「倍率は100倍ぐらいだった」

 ところが最近は、そんな余裕がないという。

「例えばその日の紙面を作るのに5人の記者が必要だとします。常に元気のいい状態で稼働するには、ベテランの駐在も含めて8人前後で回すのが理想ですが、現在はベテラン込みで5人が日々フル稼働。誰かを休ませたら欠員状態になり、疲弊する。そんなイメージです」(石戸氏)

 先の西田氏が後を継ぐ。

「ここ10年で、新聞記者の人数は25%減っています。こうなると日々出稿できるニュースの本数も減るので、これを補うために記事のストックを増やすことになる。結果的に、いつでも掲載できるエモい記事が大量に生まれているのだと思います」

 一体なぜこれほど記者が減ってしまったのだろうか。

「私が入社した1994年は、朝日新聞も人気企業ベスト10に入っていました。2000~3000人が受験して、倍率は100倍ぐらいの人気ぶりでした」

 とは、元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏。

「それが現在は経営の悪化で給料は安くなり、読者離れにより社会的影響力もない。職場としての魅力がなくなり、優秀な人材も集まらなくなりました」(同)

次ページ:「職人の集まりを“普通の会社”にしてしまった」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]