新庄剛志が涙のフルスイング、中畑清は劇的ホームラン…日本シリーズで「野球の神様」に愛された男たち

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 現役最後の打席で劇的な本塁打を放ち、涙を流しながら日本一の瞬間を迎える……。プロ野球の最高峰、日本シリーズには、まるで筋書きが用意されていたかのような引退劇がある。【久保田龍雄/ライター】

持ってるわ、オレ

 10月24日に開幕する今年の日本シリーズは、2年連続日本一を狙うソフトバンクと、2年ぶりの下剋上に挑むDeNAが激突する。過去の頂上決戦でも、現役引退を決めたスター選手が最後の大舞台で思いがけない活躍を見せ、有終の美を飾った例は少なくない。そんな“野球の神様”に愛された男たちを振り返ってみよう。

 日本シリーズ最終戦が現役最後の試合となり、野球人生で初めての日本一に輝いたのが、日本ハム・新庄剛志である。

 日本ハム移籍3年目の2006年、開幕戦の楽天戦で本拠地・札幌ドームが4万3000人のファンで埋め尽くされるのを見た新庄は、「札幌ドームを満員にする」という入団時の公約を実現したことで、「自分の仕事は終わり」と実感したという。

 4月18日のオリックス戦では、満塁弾を含む2本塁打5打点の大活躍。ヒーローインタビューに呼ばれた新庄の口から、驚きの言葉が飛び出した。

「今シーズン限りでユニホームを脱ぐことを決めました」

 ファンの前で突然の引退宣言。ここから、ミラクルとも言うべき“新庄劇場”最終章が幕を開ける。

 実は、新庄が入団時に掲げた公約には、もうひとつ「チームの日本一」があった。

 開幕から勝率5割前後で推移していた日本ハムだったが、6月下旬から11連勝を記録するなど、“新庄効果”とも言うべき快進撃で優勝戦線に急浮上。シーズン終盤には西武、ソフトバンクとの三つ巴のV争いを制し、プレーオフも勝ち抜いて25年ぶりの日本シリーズ進出を果たす。

 中日との日本シリーズでも第2戦から3連勝。前身球団の東映以来、44年ぶりの日本一に王手をかけた第5戦は、1対1の6回にセギノールの2ランで勝ち越し、試合の主導権を握った。

 さらに8回、稲葉篤紀の右越えソロで4点目を追加。次打者・新庄に現役最後の打席が回ってくる。

「7回くらいからヤバかった。チャンピオンとかそういうことじゃなくて、この仲間と出来なくなるという気持ちがすごく強くて」

 感極まった新庄は涙を流しながら打席へ。中里篤史の直球を3球続けてフルスイングし、空振り三振に倒れた。今も語り継がれる“涙のフルスイング”である。

 9回2死、中日最後の打者・アレックスの飛球が左中間に上がる。

「(涙で視線がぼやけて)オレのとこに飛んできたら捕れなかった」という新庄。だが、目の前で“弟分”のレフト・森本稀哲がキャッチし、日本一が決定。2人は左中間フェンスの下で熱い抱擁を交わした。

「持ってるわ、オレ。本当にこの漫画みたいなストーリー、出来過ぎてません?」

 2つの公約を果たしてユニホームを脱いだ新庄。本人さえ信じられないほど劇的なフィナーレは、まさに“野球の神様”からの贈り物だった。

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