船でしか辿り着けない沼津の名建築「淡島ホテル」とは? 全室スイートルームで「富士山を望む」バブル期の日本人が思い描いた“リゾートホテル”の理想形
静岡県沼津市といえば、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台となった聖地であり、アニメの聖地の中でも特に有名である。聖地を訪れる魅力の一つになっているのが、作中のキャラクターに縁の深い施設に宿泊できることだろう。これは数あるアニメの聖地でもなかなか珍しいケースで、ファンにはたまらないものである。
【名建築】淡島ホテル内にある“海辺ならでは”をモチーフにしたインテリアのバー
アニメの作中に登場するスクールアイドル「Aqours」を立ち上げたのは高海千歌というキャラクター。その実家「十千万旅館」のモデルになったのが「安田屋旅館」である。そして、「Aqours」メンバーにして作中屈指のお嬢様であり、ホテルチェーンを営む小原鞠莉の実家のモデルこそが、内浦湾に浮かぶ無人島・淡島に建つ「淡島ホテル」なのだ。
淡島ホテルは会員制のホテルとして出発し、政財界の要人が多数訪れてきたリゾートホテルだが、意外にも建築の視点で紹介されることは少ない。しかし、竣工当時は建築雑誌「新建築」に写真入りで紹介された、沼津を代表する名建築の一つなのである。【取材・文=山内貴範】
島全体をまるごと開発
淡島ホテルが開業したのはバブルの余韻が残る1991年であり、今年で開業35年を迎える。設計に当たったのは、国内外の建築事務所で勤務したのち独立した建築家の椎名政夫氏と、大手ゼネコンの大成建設設計本部である。淡島は周囲約2.5km、高さ約130mの小島であり、その先端にあるV字型の土地を活かして建設された。
1980~90年代は空前の好景気も後押しして、全国的にリゾート施設の建設ブームが起こった。伊豆半島周辺でも開発が進み、美術館、別荘、ホテルなどが数多く建設された。淡島ホテルもそうした流れを受けて計画されたといえるが、淡島が建設地に選ばれた要因は何だったのだろうか。
まず、沼津は都心からのアクセスが便利であり、明治時代には御用邸が建設されて皇族も多数訪れ、さらには財界人が別荘を構えるなどリゾート地として知られていたことが挙げられる。そして、駿河湾の向こうに富士山が望める淡島の立地が、唯一無二で素晴らしかったためだろう。
開発を主導したのは、東京相和銀行(現:東京スター銀行)の会長・長田庄一氏である。長田氏のこだわりはとんでもないものだった。護岸工事を進めて島全体を開発し、ホテルのみならず水族館なども備えた一大レジャー空間に変えたのである。それだけこの淡島を気に入り、可能性を感じていたのだろう。
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