「最近、転職されたんですか?」…“バス旅”で人気再燃「太川陽介」が不遇時代に“コンビニ店員”から尋ねられた言葉
蛭子さんとの掛け合い
一方の太川は「Lui-Lui(ルイルイ)」(77年)がヒットし、「レッツヤン」のメイン司会という看板を持ち、舞台役者としては「細雪」という代表的な作品がある。さらに、07年にスタートして今も続いているヒット番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京系)に、50代を前にして出会った。太川はいわば70年代アイドル世代のもっともマルチな成功者といってもいい。
「バス旅」は、太川と漫画家の蛭子能収(78)とのデコボコぶりが売りの一つ。筆者は当初から「バス旅」のファンで、こちらも今も続く「居眠り徳さん」こと、徳光和夫(85)の「路線バスで寄り道の旅」(テレビ朝日系)、どちらの番組も取材できないかアプローチし、「寄り道の旅」は千葉編で同行取材することができた。しかし「バス旅」は、同行は難しいので、秘話の連載ができないかとお願いしたが、却下だった。
せめて太川に少しでも「バス旅」の話を聞きたいと思って実現したのが22年のインタビューで、蛭子が降板したタイミングだった。番組では気まずくなることもしばしばだった蛭子について、太川は〈本当にいろんな人から「寂しい」という声をいただきました。楽しみにしてくれている視聴者に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。だから、求められる限りはやりたい〉(インタビューより)と決意を語った。
さて、そんな順風満帆と思われる太川だが、実は挫折を味わったことはあまり知られていない。「レッツヤン」の後半には「役者になりたい」という願望が湧いてきたという。歌手、タレントではなく「俳優」の肩書きが欲しかった。「レッツヤン」のメイン司会をやっているとお山の大将でいることはできる。が、ある出来事をきっかけに将来が不安になり、司会を降りる決断をした。
その結果、どうなったのかというと、「いきなり仕事がなくなった」(『ルイルイ仕切り術』小学館刊から)。友人の誕生会に行くにもプレゼントを買うお金がなく、ひきこもりのような状態になってしまった。
決定的だったのは買い物に出かけたコンビニで店員のおばちゃんに「最近、転職されたんですか」と訊かれたこと。太川は強烈に傷つき、コンビニにすら出かけなくなったという。
「今? ヒマ!!」
だが、太川は開き直った。友人と出会った時に「今何してるの?」と訊かれた太川はこう答えたという。
〈今までだったらここで“なんやかんややってて”と自分にウソをついていたんですが、この時からボクは今までとは違う、こんなセリフを言えるようになったんです。
「今? ヒマ!! 全然仕事がないんだけど、なんかない?」
って。気持ちが入れ替わったんですね。その日から本当に楽になりました。今まで会えなくなっていた人とも平気で会えるようにもなりました〉(前掲書から)
そして、そのタイミングで大きな仕事が舞い込む。それが「起死回生」と太川が言う東宝のミュージカル「エニシング・ゴーズ」、さらに俳優としても確固たるポジションを築くことになる舞台「細雪」。流れが一気に変わった。それがその後の「バス旅」にまでつながることになった。
くすぶっていた太川の人生を変えたのはコンビニのおばちゃんの「最近、転職されたんですか」のひと言だったとは……。人生はこれだからわからない。
珍道中の蛭子との「バス旅」では毎回イライラしっぱなしだったそうだ。そんな時は〈ただただ時間の経過を待って、怒りを鎮める。対処法は一言でいうなら“時間”それだけです〉(前掲書から)。
もっとも、そんな蛭子との出会いがあったからこその「バス旅」人気であることも、太川は重々わかっているはずだ。





