トランプ氏「カネと大言壮語」は効果薄、共和党敗北なら「妨害工作」の可能性も…新たな火種は「強圧的態度で退職者続出」の財務長官か

国際

  • ブックマーク

共和党敗北なら「妨害工作」も?

 金で票を勝ち取ろうと目論む共和党だが、広告攻勢は功を奏していないようだ。

 米紙ワシントン・ポストは7日、激戦区で共和党は約5億ドル(約790億円)の資金を投じたが、大規模な広告攻勢は今のところ明確な効果を上げていないと報じた。民主党へのネガティブ・キャンペーンを展開しても、生活苦の問題が改善されない限り、共和党に追い風が吹くことはないということだろう。

 選挙戦を優位に進めている民主党にも警戒感が広がっている。CNNは4日、シューマー上院民主党院内総務が、選挙戦前後にトランプ氏が実施する可能性がある妨害手段に備え、専門家らを集めて対応策を策定していると報じた。

 想定されるシナリオには、トランプ氏が州兵などを投票所に配置するケースや、外国の敵対勢力が投票システムをハッキングしたとして連邦当局が投票用紙を押収する事態などが含まれている。

 民主党の懸念が現実となれば、米国の政情は一気に不安定化する可能性がある。

新たな“台風の目”はベッセント財務長官

 筆者が注目しているのは、トランプ政権の経済政策の舵取りを担ってきたベッセント財務長官の評価が揺らぎ始めていることだ。

 2024年11月、大統領選に勝利したトランプ氏がベッセント氏を第79代財務長官に指名すると、金融市場からは歓迎の声が上がった。ソロス・ファンド・マネジメントや自身のヘッジファンドなどを通じて債券・為替市場に長年身を置き、政治よりも投資の経歴が有名な同氏が、トランプ氏の財政赤字拡大志向に対する防波堤になると期待された。

 だが、財務長官就任から1年と9カ月が過ぎようとしている今、ベッセント氏は具体的な財政赤字削減策を示すことなく、小手先の市場介入に終始している。当初あった金融市場の期待もしぼんでしまった。

 ベッセント氏への人格攻撃も始まっている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版は7日、「ベッセント氏が高官らに罵声 米財務省の内幕」と題する記事を掲載した。記事によれば、ベッセント氏の強圧的な業務姿勢も災いして、同氏の就任から今年8月末までに、上院で承認を受けた財務省高官7人が退任したという。直前の4政権の同時期に比較して異例の多さだ。

著名投資家の「不吉な予言」

 ベッセント氏の信任低下を市場関係者は危惧し始めている。

 米著名投資家のレイ・ダリオ氏は10月上旬に開催されたイベントで、今後数年内にどこかで債務危機が起きるとの見方を示した。米国債市場の需給の不均衡が米長期金利の上昇を引き起こしており、市場や経済が圧迫されるという。

 ダリオ氏は言及しなかったが、この警告の裏にベッセント氏の政策手腕に対する疑念があることは間違いないだろう。

 債務危機が起こるかどうかは定かではないが、債券市場が不調に陥れれば、好調な株式市場にも異変が生ずる。そうなれば、株高による資産効果のおかげで好調だった個人消費が打撃を被るのは必至だ。

 同盟国である米国の動向は日本の行く末を大きく左右する。引き続き高い関心を持って注視すべきだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。2026年3月末日で経産省を退職。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。