「太地喜和子さんがまだ海中に残っていると」…92年に不慮の事故で世を去った大女優 消防署員らが明かした救助現場の一部始終

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桟橋上で後部から海に転落

「海が見たい」という太地さんに、Bママは「知り合いの船長がいる」と応じた。3人はママの運転するトヨタスプリンター・シエロに乗り込み、市内和田の観光桟橋に車を乗り入れたが、係留中の船にBママの知り合いはいなかった。

 桟橋は幅が10メートル、長さ100メートル。その桟橋を後退中、車の方向を変えようとして、4人を乗せたこのスプリンターは後部から海に転落した。午前2時20分ごろのことだ。天候は小雨。引き潮で、桟橋から海面までは3メートルほど。Bママの隣の助手席に太地さんがいて、後部座席に男優2人がいた。

 伊東警察署への第1報は2時23分。現場近くの車にいた看護師(45)の通報だった。彼女の目撃談。

「あの晩は家で嫌なことがあったので、午前1時半頃、ドライブに出たのです。桟橋から20メートルほど離れた駐車場に車を止めて、裕次郎のテーブを聞いて、ウトウトしてると、何か鉄パイプを落としたような音がした。それから酔っ払い同士が怒鳴っているような声がするので、身がすくんで動けなくなりました。ところが、5分ほどすると、今度は“助けて”という声と“キミコさん”と人を呼ぶ声がしました。喜和子でなくキミコと聞こえたんです」

 岸に駆け寄ると、船の係留ローブに掴まっている男と、女を腕に抱えて海面に浮いている男の3人の姿が見えた。彼女が110番に走り、ほどなくして現場に駆けつけたのは、警察から急報を受けた伊東消防署の救急隊と救助隊だった。

太地さんの顔は血の気が失せ、真っ白に

 消防署から現場までは約100メートル。2時28分に第1陣が到着し、計17人が動員された。消防署の稲葉知章査察係長の話。

「隊員がすぐ海へ飛び込み救助にあたりましたが、女性の方は相当水を飲んでいるようでした。男性の1人が、女優の太地喜和子さんがまだ海中に残っているというので、隊員が素潜りで海底に向かった。水深は3.2メートルです。海底に天井を上にして沈んでいる車を発見し、ライトで照らし出したところ、後部座席にうつぶせで浮かんでいる状態の人間を発見。窓は運転席側と後部の左側が開いていましたが、ドアはすべてロックされていて開きませんでした」

 そこで運転席の窓から手を突っ込み、後部右側のロックを解除してドアを開けた。

「中の人を引っ張り出し、海面に上ってからは、立ち泳ぎでマウス・トゥ・マウスの人工呼吸をほどこしました。でも陸へ揚げた時には、グッタリしていて、脈もなく呼吸もしていませんでしたね」

 太地さんはハイネックシャツの上に赤茶のジャケット、それにジーンズ、ブーツという出で立ちだった。もちろんベレー帽はもうなかった。

 再び先の看護師の話。

「引き揚げられた喜和子さんの顔は血の気が失せ、真っ白になっていました。私は看護婦ですから、その白さが何を意味するのかはわかりました。最初に助けられた男の人は、ゲーゲーと吐いた後、“喜和子さんを助けてくれ”と叫んでいました。とても自分で喜和子さんを救助できるような状態ではありませんでしたね」

 ***

「おい、何してるんだよ!」――第2回【車ごと海に落ちて死去…女優「太地喜和子さん」 同乗者たちが吐露した深い悔恨と、俳優仲間が霊安室で叫んだ「馬鹿野郎」】では、病院に駆け付けた男優が見た太地さんの姿などを伝える。

デイリー新潮編集部

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