石坂浩二でも古谷一行でもない…「いちばんイメージ通り」と言われた“金田一耕助”役の俳優とは? 映画「八つ墓村」新作公開で振り返る“異色の77年版”

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「寅さんじゃない渥美さんを見たい」

「渥美ちゃんなら大丈夫。あの人は芝居がうまいですからね」

「八つ墓村」の「予告編No.」で、渥美の金田一起用について、原作者の横溝氏はこう語っている。野村監督は「拝啓 天皇陛下様」(1963年・松竹)で渥美を主演に起用して以来、その演技力を評価していたという。また、当時の報道でも、

〈その話題のひとつは“寅さん”こと渥美清が名探偵・金田一耕助に扮すること。(略)

 金田一探偵役は「本陣殺人事件」で中尾彬(注・75年公開)、「犬神家の一族」(注・76年公開)で石坂浩二が演じているが、渥美は、

「顔じゃ勝てないがチエくらべなら負けません」

 とファイト満々だ。しかもこの金田一探偵、原作では“モジャモジャの頭髪でおよそ風さいのあがらない男”とあるため、

「渥美がいちばんイメージ通り」

 という現場の声もあって渥美は勇気百倍で撮影に加わっているという〉(「週刊明星」1976年9月5日号)

 石坂が演じた金田一耕助は、着物に袴姿でボサボサ頭にチューリップハット、大きなトランクケースを持っていた。だが、渥美は髪の毛はボサボサでも、シャツにズボン、ジャケットを着ることもあった。「予告編No.2」では街行く人に「今度、松竹が『八つ墓村』を映画にするのを知っていますか」と質問。ある女性は「渥美清さんが出演するやつですか? 知っています」と述べ、鑑賞に行く理由を問われ、こう答えている。

「やっぱり、寅さんじゃない渥美さんを見たいですね」

 また4人組の女子高生は「金田一は誰がやるか知ってるかな?」と問われ、一人が「石坂浩二さん」と言いかけると、すかさず別の女子高生が「違うわよ、渥美清がやんのよー」と答えて盛り上がる。若年層まで「寅さんが演じる金田一」は話題になっていたようだ。ちなみに、同作では「男はつらいよ」レギュラーも出演しており、3代目おいちゃんを演じた下條正巳や、寅さんの甥・満男を演じた吉岡秀隆(56)も出演。吉岡は2018年のNHKドラマ版で金田一役を演じている。

 撮影現場での渥美の様子については、主演を務めた萩原健一が著書『ショーケン』(講談社2008年)の中で明かしている。鍾乳洞の中で、双子の老婆の一人の遺体を見つけるシーン。台本では、金田一が「そのままにしとこう」とある。それはおかしい、老婆が溺死しているのを見たら、すぐに引き上げるべきではないかと萩原は野村監督に意見した。渥美にも「これでいいんですか、渥美さん。絶対、変だと思いません?」と聞くと、渥美はこう答えたという。

「いや、最初っから変なんだよ。だってさ、おれが金田一耕助やってんだから」

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