夏の甲子園、決勝進出校はともに6投手起用…智弁和歌山と健大高崎が10カ月で「勝てるチーム」に変わった理由

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「選手が揃っていた」だけではない

 投手陣を使い切る仕組みに加え、フィジカルの充実も共通していた。

 今大会でベンチ入りした20人の平均体重を計算すると、智弁和歌山は83.1kg。全49校でトップの数字だった。ユニフォーム姿から上半身、下半身ともによく鍛えられている様子がうかがえる。準決勝では織田の速いストレートに力負けせず打ち返しており、強いスイングを支える土台として体作りの成果を感じさせた。

 健大高崎はベンチ入り20人のうち10人を下級生が占める。平均体重は76.1kgで全49校中6位。若いチームながら、すでに十分なサイズを備えていた。

 大会前に各校へ行われたアンケートを見ると、当初提出された体重と最終的な登録時の数字が異なる選手は少なくない。計測時期や条件が違うため、数字の増減だけでトレーニングの成果までは判断できない。ただ、上位校に一定のサイズを備えた選手が揃った点は、一つの傾向として注目に値する。

 平均体重の上位には、智弁和歌山、仙台育英、花咲徳栄、横浜、花巻東、健大高崎が並ぶ。仙台育英に敗れた花咲徳栄を除き、すべて準々決勝以上へ進出した。

 もちろん、平均体重だけで勝敗を説明するのは無理がある。強い打球を生み出し、速球に力負けせず、連戦でもパフォーマンスを維持するには、それを支える体の強さが必要になる。今大会の結果からは、フィジカルの充実と勝ち上がりの間に一定の傾向を読み取れる。

 そして冒頭で触れた通り、智弁和歌山、健大高崎は昨秋、ともに県大会準々決勝で敗れている。智弁和歌山は近大新宮に4対9、健大高崎は桐生第一に4対5。地区大会へ進めなかったチームが、約10カ月後には全国の1位と2位になった。

 投手を増やすだけでなく、登板の順番やタイミングを整え、それを支える捕手を育て、故障を防ぎながら体を強くする。秋から夏にかけて積み上げてきたものをたどると、躍進を単に「選手が揃っていた」で片づけてしまえば、本質を見誤る。

 すでに完成された戦力で勝ち進んだのではなく、秋から夏までに戦力を増やし、それを実戦で使い切れる状態まで引き上げている。智弁和歌山と健大高崎の歩みには、短期間でチーム全体を変える力が表れていた。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。