「プーチンの戦争」長期化で壊れる「ロシア社会」 帰還兵のDV、アルコール依存症、抗うつ剤の売り上げが増加する“不都合な真実”
2022年2月から始まった「プーチンの戦争」は5回目の夏を迎え、ロシア社会はいたるところに綻びが見え始めている。中でも深刻化しているのがロシア人の心の病だ。戦争の長期化がロシア人の心を蝕み、それはかつて、旧ソ連が苦しめられた心理的・社会的疾患の後遺症である「アフガニスタン症候群」や「チェチェン症候群」になぞらえられ、「ウクライナ症候群」とも囁かれている。
【前後編の後編】
【佐々木正明/ジャーナリスト、大和大学社会学部教授】
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深刻化するDV事件
ウクライナ軍のドローン部隊の猛反撃で、ついにロシア国内も本格的な攻撃に晒されるようになっている。20~40代の健康な男性は召集令状による動員への恐怖が頭から離れない。女性にとっても、戦場に行った夫や息子が棺に収められて帰ってくるかもしれないという不安に苛まれる。その現象は、市民の精神疾患やアルコール禍の増加という数字で表れている。特に帰還兵が妻や恋人らに加えるDV事件の実態は深刻だ。
2026年1月、朝晩はマイナス30度にもなるシベリアの極寒の地イルクーツクで凄惨な事件が起きた。
ウクライナの戦地から帰還した32歳の男は数か月にわたり妻と7歳の息子に激しいDVを繰り返していた。母子は身の危険を感じ、シェルターへ避難したが、後に男は居場所を突き止め、シェルターの近くで待ち伏せした。
しかし、男は妻と子に会えなかった。その代わり、妻の別の知人女性をナイフで脅して自宅に監禁し、警察の説得もむなしく殺害した。
硝酸を頭に浴びせ…
2026年5月、ロシア第2の都市サンクトペテルブルク。ウクライナへの戦争に参加した27歳の帰還兵が元恋人を襲撃する事件が発生した。
女性は帰還兵から復縁を迫られ、しばらく付きまとわれていた。警察にも複数回、相談していたが有効な手立ては取られなかった。帰還兵は女性を待ち伏せ、ナイフで複数回切り付け、硝酸を頭部に浴びせた。
女性は顔や目、まぶたなどが損傷し、皮膚への化学熱傷が約3分の1に広がるなどの重傷を負った。
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