「プーチンの戦争」長期化で壊れる「ロシア社会」 帰還兵のDV、アルコール依存症、抗うつ剤の売り上げが増加する“不都合な真実”

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事件の共通点とは

 2つの事件には共通点がある。

 2人の男は、かつて女性への傷害事件で有罪判決を受けていた。服役中に、戦地へ出向けば恩赦が与えられるというプーチン政権の兵員調達策によって、刑期を終えず社会復帰していたのだ。

 2人は戦地に戻ることを希望していたとの証言もある。特にサンクトペテルブルクの男は犯行時に「自分は戦争参加者だから大丈夫だ」と語っていたことが報じられており、男は戦地に戻れば元恋人への事件でも刑事責任を免れると認識していた可能性が高い。

 独立系メディアは、こうした事件が起こる背景に、戦地に出向いた愛国者である元帰還兵を英雄視する社会の風潮があると指摘する。さらに2024年に改正された刑法、および刑事訴訟法は、「特別軍事作戦」――ウクライナでの戦争の参加者に、事実上の免責を与えている。動員された兵士は、有罪判決を受けていたとしても、後に勲章を授与されたり、動員解除で除隊さえすれば、刑事上の処罰を一時停止し、終結させることができるという。

暴力のブーメラン

 ヘルシンキ大学のユリヤ・ブリン研究員は研究成果を発表し、ロシア国内で起こっている帰還兵の問題について「戦時下の残虐行為が家庭におよび、女性たちが矢面に立たされている」と指摘した。

 旧ソ連時代、アフガニスタンやチェチェン戦争の後で見られた「暴力のブーメラン」が、ウクライナ侵攻によって繰り返されている。

 報告書にはさらに重要な言及がある。前述の2024年の法改正の規定には、「未成年者への性的虐待を除くほぼすべての暴力犯罪に適用され、被害者への同意も賠償も必要としない。実際には、殺人、強姦、家庭内暴力で有罪判決を受けた男性は、戦争に従事していれば処罰を免れることができる」のだという。

 家庭内暴力事件においてはウクライナでの戦闘経験を情状酌量の要素として扱い、 裁判所では執行猶予や大幅減刑を言い渡すケースも常態化している。

アルコール渦の再来

「ウクライナ症候群」とは、「アフガニスタン症候群」や「チェチェン症候群」のように精神医学的には確立した疾患ではないものの、政権が勝利を最優先にする姿勢や、戦争の悲惨さが帰還兵・市民に及ぼすPTSD、アルコール・薬物問題など複合的な要素がからむ症候群であることが浮かんでくる。

 独立系メディア「ビョールストカ」は昨年12月、ウクライナ戦争に参加した帰還兵は、2022年2月から4年間で1000人以上の親族や友人を殺害、または負傷させたとする独自調査の結果を発表した。

 ビョールストカはメディア報道や裁判記録を丹念に積み上げ、この数字を割り出した。帰還兵が起こす事件について「そのほとんどは家庭内で発生し、飲酒の影響下で行われている」と説明した。

 アルコール禍はかつてソ連時代末期に猛威を振るった。国家の崩壊に伴う社会不安と貧困が、アルコールに依存する状況を生み出し、問題が爆発的に表面化した。

 飲酒に起因する凄惨な殺人事件やDVが猛威を振るい、製造業の工場では、勤務中にウォッカを飲む労働者が後を絶たず、機器の誤操作による火災や労災事故が頻発した。

 ウォッカや密造酒の多量摂取は、成人男性の早死の主要因にもなった。アルコール禍に関連する自殺も平均寿命を押し下げ、1990年代初頭の成人男性の平均寿命は57歳にまで落ち込んだ。

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