「プーチンの戦争」長期化で壊れる「ロシア社会」 帰還兵のDV、アルコール依存症、抗うつ剤の売り上げが増加する“不都合な真実”

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増加するアルコール依存症

 ウクライナ戦争の長期化は再び、ロシア社会にあの悪夢を呼び起こすリスクを高めている。

 ロシア保健省は毎年、アルコール依存症、またはアルコール性精神病と初めて診断されたロシア人のデータを発表している。それをもとに、独立系メディア「Important Stories」が分析したところによれば、2025年は、住民10万人あたりの患者が56.9人となった。前年比30%も増加し、ここ10年で最多の患者数となっている。

 問題はこのアルコール依存症増加の背景を公的機関や国営メディアが詳細に発表していないことだ。プーチン政権がウクライナへの勝利を最優先にし、戦争の長期化に伴うネガティブな社会状況を結びつけまいと厳しい検閲をかけていることが背景にある。

売上を伸ばす抗うつ剤

 戦争の長期化がロシア社会にもたらしている「不都合な真実」は、抗うつ剤や精神安定剤の売上の傾向にも表れている。

 ウクライナ侵略に伴うロシアへの制裁では、人道的な見地から、医薬品の販売は除外されている。ロシア国内の製薬ヘルスケアの市場動向を分析している「AlphaRM」のデータをもとに、今年5月、露メディア「РБК」が報じた記事によれば、ロシア国内では抗うつ剤や精神安定剤の販売が「記録的なペースで伸び続けている」という。主にデンマークやイタリアの製薬会社の製品が売れているようだ。

 この4年で、販売量ベースで2.4倍に拡大。さらに、2026年第一四半期も昨年同時期に比べ22%増加しており、ウクライナからの攻撃を受ける国境沿いのベルゴロド州などでは、さらに売り上げが急増していることがわかっている。

 プーチン大統領は露軍が勝利するまで戦闘を継続するよう命令している。しかし、その一方でロシア国民の心の病は深刻化している。かつて、戦争を経験した国がそうだったように、「ウクライナ症候群」はたとえ停戦を結んだとしても、その後、長期間、ロシア社会を苦しめていく未来が予想される。

前編】では、プーチン氏が北方領土を訪問せざるをえなくなった理由について詳述している。「やめられない戦争」の継続によって、大統領が抱えた“深刻なジレンマ”とは――。

佐々木正明(ささき・まさあき)
ジャーナリスト、大和大学社会学部教授。岩手県一関市生まれ。大阪外国語大学ロシア語学科(現・大阪大学)卒業後、産経新聞社入社。モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長を経て、運動部次長、社会部次長などを歴任。2021年より現職。8年前はウクライナのマイダン革命やロシアによるウクライナ併合を現地で取材した。専門分野はロシア・旧ソ連諸国情勢、国際情勢に加え、オリンピック・パラリンピック、捕鯨問題などにも詳しい。単著に『シー・シェパードの正体』、『環境テロリストの正体』、『「動物の権利」運動の正体』など。

デイリー新潮編集部

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