女子テニスを沸騰させる「21歳の新星」 フィリピンの可憐な英雄「アレックス・イーラ」は“新時代の女王”となるか

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13歳でスペイン・マヨルカ島に

 続いてカナディアン・オープンへの出場が発表されると、イーラの初戦会場とされた2800人収容のスタンドはすぐに完売。主催者が急きょ、舞台をセンターコートに変更する出来事もあった。イーラの周りには大勢のファンが集まり、練習コートでさえ鈴なりの観衆で埋まる。試合ではイーラがポイントを奪うたびに大歓声が響き、「これはテニスじゃない、バスケットボールの試合のようだ」と眉をひそめるオールドファンもいるという。つまり、イーラに魅了されてスタジアムに押しかけるファンたちは、「伝統的なテニス観戦のマナーを逸脱している」。それほどの熱狂をイーラが巻き起こしているのだ。

 2005年5月、イーラはフィリピンのケソン市で生まれた。テニスを始めたのは4歳の時。
「ひと目惚れという感じではなく、徐々にこのスポーツに夢中になっていった感じだと思います。小さいころは兄が祖父とよくトレーニングをするのを見ていました」

『World Tennis』のインタビューに答えて、イーラが回想している。

「そして徐々にテニスに真剣に取り組むようになり、最終的には『テニスしかできない』と思うようになりました。他の職業に就くことは考えられなくなりました」

 13歳でスペイン・マヨルカ島に渡り、ラファエル・ナダル・アカデミーで育った。ナダルの本拠地に飛び込んだのは、「子どものころ、多くの共通点を見て彼(ナダル)を尊敬していました。私たちは二人とも左利きで、彼のコートでの戦い方が大好きだったので、テニスをする時はいつも真似しようとしていました」と、ナダルへの敬意が根底にあることも告白している。

 そして、イーラはアカデミーを「第二の故郷」とさえ感じている。時には孤独や戸惑いもあったが、

「彼がほぼ毎日、練習している姿やジムで見かけるのは本当に刺激的です。彼の勤勉な姿勢や私たちが彼から真似できるものを目の前で見られるのです」

 と語っており、アカデミーでナダルという圧倒的な存在を日々間近に感じられる環境が、自身の成長の大きな糧になっていることが伺える。

目立った活躍は20歳になってから

 ただ、当初は13歳。思春期のすべてをマヨルカ島で過ごした。この時期の孤独との闘いについて、フィリピンのジャーナリスト、カレン・ダヴィラのインタビュー番組『1on1』の中でこう答えている。

「家族が恋しかった。故郷が恋しかった。スペインに引っ越してからは、すべてが違っていました。私は、普通の子どもたちが友人と過ごす時間の大半を犠牲にしました」

 そう言うイーラに、カレンが「プロムは行った?」と水を向ける。プロムとは、アメリカの青春ドラマによく登場する学年末のダンス・パーティー。これに対してイーラは毅然と答える。

「いいえ、プロムには行っていません。プロムのデートは一度もありません」

 青春のすべてをテニスに賭けて、イーラはフィリピン女性として初めての歴史を開いたのだ。

 インタビューの中でイーラは両親から受けた影響をこう語っている。

「両親はいつも私に『迷うな』と言います。迷っている暇なんてありません。その言葉は、すべての試合、すべての大会で私が胸に刻んでいるモットーのひとつです」

「私は常に礼節を重んじ、困難には真正面から立ち向かい、自分の感情をコントロールし、感情に支配されないよう努めています」

 目立った活躍をし始めたのは20歳になった昨年から。2025年マイアミ・オープンで準決勝に進出。WTA125のグアダラハラ・オープンで優勝を飾った。そして2026年7月、ウィンブルドンで大きな飛躍を遂げた。

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