一都三県の塾の勢力争い――高校受験塾は各都県で地元塾が激闘、中学受験塾は「四強」の構図に変化あり
首都圏における2026年の中学受験率は18.06%(首都圏模試センター)と過去最高水準。しかし逆にいえば、中受はしないという層が5分の4の割合で大半ともいえる。受験市場全体の中では、まだまだ高校受験がボリュームゾーンであることを忘れてはならない。そこで今回は、一都三県の高校受験塾事情と中学受験塾事情をあわせてみていこう。(西田浩史/教育ジャーナリスト、追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)
人口が多い分だけ、首都圏で高校受験に力を入れる塾は無数にある。
それでも、各都県ごとに“幅を利かせる大手どころ”はまちまちだ。
まずは東京。上位層が目指すのは、日比谷や西、国立などの公立トップ高や、開成、筑波大学附属駒場、巣鴨、早慶附属校など高校からでも入れる名門中高一貫校といったところだ。中堅層が目指すのは公立から私立まで選択肢は幅広い。
こうした高校事情の中、塾については、早稲田アカデミー、ena、栄光ゼミナールの3つが一歩抜けている。特に早稲田アカデミーの成長は著しく、2026年は日比谷と開成にそれぞれ100人以上の合格者を出すなど、他塾を圧倒しつつあるといっていいだろう。後に詳しく述べるが、中学受験市場においても盤石な地位を築いている。
都内の学習塾経営者によれば、
「早稲田アカデミーの講師陣は、業界内でも高く評価されています。授業力はもちろん、生徒への声掛けや目標設定、保護者対応まで細かく鍛えられており、その質の高さが早稲アカブランドを支えています。また、習熟度別のクラス編成や講座も好評で、特に開成や筑駒、早慶附属高校など志望校ごとの専門的な対策が受けられる中3向けの『必勝志望校別コース』は看板講座となっています。私立だけでなく、日比谷をはじめとする最難関都立高校対策にも注力しているので、私立と公立の両方を視野に入れながら受験戦略を立てられるのは、早稲アカならではの強みだと思います」
ena、栄光にもそれぞれの戦略あり
人気公立高における合格実績は、enaも負けてはいない。2026年は日比谷に70人以上の合格者を出し、その他上位公立高校にも毎年コンスタントに50人以上を送り出している。
enaが強みとするのは、都立高校入試を徹底分析して作られたオリジナル教材と、内申点対策を重視した指導体制だ。特に都立高校受験では学力試験だけでなく内申点が合否を左右するため、各中学校の定期テスト範囲や出題傾向に合わせた対策を実施し、内申点向上をサポートしている。こうした体制が、名門都立高における実績につながっているわけだ。
埼玉県発祥だが、現在は東京・千代田区に本社を置く栄光ゼミナールは、トップ高校の合格実績でいえば早稲アカ、enaに水をあけられているものの、ターゲットとしている高校、対応する生徒のレベルの幅が広い。比較的少人数で地域密着型の指導を強みとし、多様な高校に生徒を輩出している。
さいたま市の50代大手塾職員によれば、
「早稲田アカデミーやenaのように最難関高校の合格実績を前面に打ち出すタイプの塾ではありませんが、その分、幅広い学力層や志望校に対応できることを強みとしています。少人数制指導を重視し、競争を強く意識させるよりも、それぞれのペースに合わせて着実に力を伸ばしていくスタイルが特徴です。地域密着型の運営を続けてきたことから、enaと同様に、学校ごとの定期テスト対策や内申点対策にも定評があります」
もちろん、これら以外にも名門塾は数多くある(新潮QUEの特集記事で詳報中)。さらに中学受験市場においては、SAPIX、四谷大塚、早稲田アカデミー、日能研の四強体制が根付いているが、この構図にも変化が起こり始めているのが現状だ。
〈新潮QUEでは、塾や予備校が繰り広げる熾烈な勢力争いについて、全国を10のエリアに分けて図解した「勢力マップ」を公開中。南関東編(前編)では、東京、神奈川、千葉、埼玉それぞれの高校受験塾の勢力争いを詳述した上で、従来の「四強体制」の構図に変化が表れ始めている中学受験塾事情などについて、7000字にわたって、図を交えながら詳述している〉


