上白石萌歌、齋藤飛鳥、蒼井優、小松菜奈、長澤まさみ…女優たちの“人生と運命”がきらめく「夏の海の映画」5選

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運命の出会い

〇「溺れるナイフ」(2016年)

 ジョージ朝倉のコミックを原作に、山戸結希監督が実写映画化。

 15歳の夏、東京でモデルをしていた夏芽(小松菜奈)は、父の故郷に引っ越すことになる。そこで神主一族の末裔であるコウ(菅田将暉)と出会い、一瞬で恋をしてしまう。2人の出会いは鮮烈だった。赤い鳥居が立つ、泳いではいけないと言われる海に、夏芽は服を着たままコウと一緒に飛び込む。彼の鋭いナイフのような心に触れるほど、離れられない夏芽。そしてコウも夏芽を忘れられず、次第に気持ちを通わせていく。だが、夏祭りの夜にある悲劇が……。

 地方都市の湿気や熱気を背景に、先の見えない若い恋が描かれている。小松は「最初、夏芽のことがよくわからなくて、日々の撮影もハードな中で不安だった」と語っている。一方山戸監督は「小松さんがなぜこれほどまでに女性から支持されているのかと考えた時、その『孤高なまでの清潔感』をお借りして『幻想みたいな性』を捉えてみたいなと思いました」と小松の魅力を語っている(「キネマ旬報」2016年10月下旬号)。

 小松と菅田は「糸」(2020年)の共演後、2021年に結婚する。小松は本作の公開時に菅田のことをこう語っている。「菅田さんはギターを持ってきて休憩中に弾いたり、自分がリラックスする方法が分かっていてすごく自由でした。柔軟性がある役者さんで素晴らしい」と(「FASHON PRESS」2018年11月4日)。本作と同じようにきっと運命的な出会いだったのだろう。

兄と妹の海の思い出

〇「涙そうそう」(2006年)

 夏川りみらが歌う名曲「涙そうそう」をモチーフにして作られた。両親がいない兄妹を、妻夫木聡と長澤まさみが演じる。

 将来自分の店を持つことを目標に、那覇で働く新垣洋太郎(妻夫木聡)。そこに高校に合格した義理の妹・カオル(長澤まさみ)が離島からやってきて、一緒に生活することに。父が失踪し、母を病で亡くしていた2人にとって、お互いの存在が生きる糧となっている。兄は妹のために昼も夜も休みなく働き続け、そんな兄の身体を心配する妹だった。

「涙そうそう」とは、涙がポロポロ溢れ出るという意味。森山良子が、若くして亡くなった兄を想い作詞した。兄妹は、母(小泉今日子)が亡くなる時、「涙が出そうになったら鼻をつまむといい」と教えられる。店を出す資金を騙し取られた時、兄と別れて妹が一人暮らしをする時、兄妹は鼻をつまんで涙を堪えてきた。

 歌詞に“古いアルバムめくり ありがとうってつぶやいた”とあるように、物語の中で家族のアルバムが何度も出てくる。そこに貼ってある写真の中に、幼い兄が妹をおんぶして美しい海岸を歩く一葉がある。2人にとって、沖縄の青い海や光は幸福だった時間の象徴だったのだ。

 本作は長澤にとって「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年)から2年後の作品。当時19歳で、高校1年生から大学生、そしてひとり立ちするまでを演じている。兄を呼ぶときはいつも「にいにい」と言って、少女に戻ったように甘える姿が印象的だ。それだけに幕切れの哀しさは、終わってしまう夏のように切ない響きを残す。

稲森浩介(いなもり・こうすけ)
映画解説者。出版社勤務時代は映画雑誌などを編集

デイリー新潮編集部

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