「東京スカイツリー(R)」「渋谷ヒカリエ」を手掛けた建築家「吉野繁氏」が明かす“都市のシンボル”を設計する苦労…「“変なものを作ったら孫の代まで笑われますよ”と言われましたね」

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タワーの設計のため、富士山に登る

――日建設計は伝統的に、個々の建築家の皆さんの癖が強いといいますか……、海外だとアトリエ系建築家になるような、個性的な方が多い印象です。

吉野:そうですね。同期の山梨知彦(注:「ホキ美術館」などを設計した、日建設計所属の建築家)なんか、本当に個性が強いからね(笑)。

――吉野さんは、自身の作風をどのように捉えていますか。

吉野:周りからの感想はあまり聞いたことがないので、自分では何とも言えません。ただ、プールの仕事が来たら自らすすんでいろんなプールに泳ぎに行きますし、ホテルの仕事が来ればいろんなホテルに泊まるなど、体験したうえでいろいろなものを作っていくタイプの建築家だと思っています。

――スカイツリーの設計時も、高い景色を見てみようと、富士山に登ったという話を聞きました。

吉野:富士山から順番に、日本の高い山を登りましたよ。北岳、奥穂高岳、御嶽山……一通り登りましたね。でも、剱岳でやめちゃったんですよ。案内人がいないと危ない、と言われたので。

――登山愛好家だったわけではないんですか。

吉野:全然違いますよ。でも、富士山に登ったときは本当に気持ちよかったですし、だいぶハマってしまいましたね。日常生活で命が危険に晒されることはあまりないですが、山だと、足をこっちの岩に置いて、もし岩が崩れたら死ぬ……という、スリリングな環境なのです。山はすべてが非日常だなと思いました。

――山から見た時の眺望が、設計の参考になったことはあるのでしょうか。

吉野:もちろんです。そして、眺望以上に印象的だったのは、御嶽山に行った時に出会った担ぎ手(注:強力と呼ばれる)の方です。荷物のほか、体が不自由な方や高齢者を背負って登る仕事をしているのですが、偶然、担がれていたおじいさんが、最後の頂上への階段を自力で登っていく様子を見ました。

 その姿を見て、スカイツリーも最後、一番高いところまでは歩いて向かうような造りにしたら、達成感が増すんじゃないかなと思ったのです。普通のタワーはもっとも高いところまでエレベーターで上がりますよね。スカイツリーは緩やかなスロープで上がっていく。これが「天望回廊」の特徴になっていますね。

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