樋口可南子、有村架純、山田杏奈、吉永小百合、真木よう子…女優たちの演技が光る「夏の山の映画」5選

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山に祈り、山に生きる

〇「山女」(2022年)

 柳田國男の『遠野物語』に着想を得て、福永壮志監督が映画化。18世紀後半の東北の山深い村を舞台に、山には神が棲むという日本古来の信仰を下敷きにしている。

 冷害が続く夏、凶作のため村民は困窮していた。凛(山田杏奈)と父(永瀬正敏)と弟の一家は、過去の出来事により村人から蔑まれながら生きてきた。ある日事件が起き、凛は家を出て早池峰山(はやちねさん)に入る。そこで、伝説の山男(森山未來)に遭い、やがて一緒に暮らすことに……。

 どんよりとした山並みの風景が映し出される。季節は夏なのに村に日が差すことはなく、荒れ果てて痩せた田畑が横たわる。凛がいつも手を合わせて祈る早池峰山は、盗人の女神が宿ると言われる。死んだ人間の魂はみんなそこに行くという山だ。凛は山男に「あの山見てると思うんだ。どんな人間でもこの世にいていいって」。そういう凛の言葉を黙って聞く山男は、神々しくも悲しく見える。

 暗く深い緑、鳥や獣の鳴き声、吹き抜ける風。凛は山の中を裸足で彷徨う。「山の中で凛の心が解放されていく感覚を味わえて、彼女らしさを取り戻していくのが演じていても楽しかったんです」(「with digital」2023年7月1日)と山田は語っている。

 山田の特徴である力強い目に引き込まれる。それは逆境に生きながら決して諦めない精神を宿しているようだ。続いて出演した「ゴールデンカムイ」(2024年)では、ヒロインのアイヌの少女を演じて大きな話題となったのも記憶に新しい。山田はその前の本作で新境地を開いていたといえよう。

山に登って分かること

〇「てっぺんの向こうにあなたがいる」(2025年)

 エベレストを初めて登頂した女性登山家として知られる、田部井淳子さんの歩んだ道を描く。吉永小百合が主演し、青年期をのんが演じた。

 多部純子(のん)たち女性だけのチームはエベレスト登頂に成功するが、純子だけが注目されると徐々に仲間が去ってしまう。長男(若葉竜也)は、有名人の母(吉永小百合)に反発する。華々しさだけではなく挫折した姿が描かれる。しかし、純子は「山が好きなただのおばさん」であることを誇りに思い、がんで余命宣告を受けてからも山を登り続けた。

 田部井さんは亡くなる直前の7月に、富士山に登っている。東日本大震災の後、東北の高校生を富士山に連れていく活動だ。七合目までしか行けなかったが、これが最後の登山となった。その場面が本作で描かれている。七合目から雄大な景色を見下ろしながら、夫の正明(佐藤浩市)に「ずいぶん高い所まで来て降りられるかと思ったけど大丈夫。私の帰るところはここだから」と言って夫の胸に触れる。家族がいたからここまで来られたのだ。

 阪本順治監督が吉永に「青年期はのんさん一択でどうですか」と聞くと、吉永も「私もそう思っていました」と即答したという。そののんは、吉永をこう語っている。「相手の瞳の奥を覗き込むような視線が印象的で、田部井さんがエベレストを見ている時と通じている」と(「週刊文春CINEMA」2025年秋号)。

 富士山以外にも夏の御霊櫃峠(ごれいびつとうげ)など山の美しいシーンが多く出てくる。田部井さんの人生に思いを馳せながら、山はやはりいいなあと感じる作品だ。

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