「おしゃれクソコンサル」介入の是非も描かれる 松本若菜の「ジャック・ニコルソン」化が可笑しい「君の好きは無敵」

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 LINEでイラストを依頼、ギャラの金額も事前に明示せず、納品後は勝手に流用しまくり、確実に中抜きしている広告代理店がある。フリーランスは仕事を獲得しても、こういうやからと闘って心が摩耗する。才能と技術を搾取された知人のことを思い出した第1話。「君の好きは無敵」の話です。

 主人公は猪突猛進、とにかく明るい草壁杏奈。大手コンサル会社の敏腕エースだったが、クライアントの気持ちを蔑ろにしてまで成功した案件で自己嫌悪に陥り、突然退職を決意。気まぐれに隙間バイトをするFIRE(早期リタイア)を宣言。演じるのは松本若菜。頭に血が上ると映画「シャイニング」のジャック・ニコルソンのような顔になるという直情径行のキャラを若菜が熱演。もう可笑しいったらありゃしない。沸点に達すると目をひんむき、顎が徐々にしゃくれていき、笑みをたたえながらも怒りの反論を展開。ニコルソン化する若菜が毎回のお楽しみになるだろうと予測できる。

 ただし、全力で突進した結果、猛省する時間もある。なぜか押入れの中で膝を抱えて、昭和風味の自作反省エレジーを歌う若菜。生来エネルギー過多の女がクールダウンする様までもがコミカル、この場面も楽しみ。優しい彼氏(金田 哲)もいるが、日々の生活で特に必要としていない感じもいい。

 で、領収書整理の隙間バイトで赴いたのは、キャラクターデザイナー・瀬尾深月(みづき)の事務所兼自宅。非社交的で世間知らず、食事は安くてデカい菓子パンで満足、超変わり者だが、カワイイものへの情熱とこだわりは強い。瀬尾を演じるのは佐野勇斗。若菜の怪演に負けず劣らず、リアクションがみずみずしくて生き生きとしている。シャイニング若菜に本気でおびえる姿が可笑しい。一見、偏狭で傲慢だが、愛らしくて憎めないキャラだ。

 人物の特性が厄介で暴走気味なのも興味深いし、それゆえの傷や痛みを伴う化学変化も期待できる。元コンサルの隙間バイターとフリーランスデザイナー、最弱? 最凶? の二人がタッグを組んで、キャラビジネスの世界に挑む物語だ。

 立ちはだかるのは、深月が働いていたキャラビジネスの老舗・MERRY。シニカルモルコというキャラをヒットさせ、経営不振から立て直したのが社長の大三島匠(おおみしまたくみ/本郷奏多)だが、深月のデザインを改変した過去が。ヒットの手法は容赦なく、ストーリー性や宣伝効果のためにはデザイナーの矜持を踏みにじる。重鎮デザイナー(白石加代子)や新人デザイナー(白本彩奈)を携え、敏腕コンサルだった杏奈にも警戒を怠らないやり手だ。アーティスト気質の深月を理解している社員(藤井 隆・小野花梨)もいるが、味方かどうかは不明。

 キャラビジネスの権利にまつわる闇も見えてきたし、杏奈の過去からはコンサル介入の副作用も見えてくる。町の洋食屋(高嶋政伸)が魂を売った結果、大切なものを失った模様。人気と話題と儲け優先のおしゃれクソコンサル介入の是非も描かれるようだ。コメディーだが、トレンド重視の軽薄な社会を皮肉る内容になるのでは。

吉田 潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2026年7月30日・8月6日号掲載

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