関西地方の大学受験予備校の“独自文化”と、激化見込まれる中学受験塾の争い
首都圏に次ぐ教育経済圏をもつ関西。【関西地方の塾の勢力争い――「馬渕教室」の“関西制覇”に地元勢は抵抗できるか】の記事では主要市場である高校受験塾について詳述したが、本稿では、大学受験や中学受験をめぐる塾の攻防に迫る。(西田浩史/教育ジャーナリスト、追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)
関西圏には全国レベルの名門大学が君臨する。京都、大阪という旧帝大に加え、神戸、大阪公立などの有力国公立大も多く、また関関同立、産近甲龍と呼ばれる大学群など、有力私立大も充実している。
よって河合塾や駿台予備学校をはじめとした大手予備校がしっかりと根を張り、大阪を中心に多数の校舎を構えている。トップ大学以外においては、各地元の有力塾も決して負けない実績を誇るが、京・阪の旧帝大や医学部を目指すトップ層はおおよそこの二大予備校が生徒をおさえており、特に医学部も含めた理系分野に強いというこのエリアの大学側の特徴から、理系の授業を得意とする駿台予備学校が一歩リードといったところか。
トップ層は大手予備校が占拠、中堅私立大は独自の受験市場も
一方、域外からの参入組も一定の存在感を放っている。
たとえば、東大専門塾として日本最高峰の学力帯の受験生を集める東京発祥の鉄緑会も関西へ進出している。あるいは、高学力層・高所得層から支持を集める東京のリソー教育グループも、グループ内の家庭教師事業や医学部受験専門塾「MEDIC名門会」を展開するなど、いわゆる“ブランド塾”の関西進出が目立つようになってきている。それもやはり、最難関大学や医学部を目指す受験生が関西には安定的に存在していることが背景にあるだろう。全国トップレベルの学力層に向けた教育ビジネスが成立する土壌が形成されている。
なお、今や三大予備校の一角と称される東進ハイスクールの存在感は、他のエリアほどではない。映像授業を軸に全国展開する東進のビジネスモデルは、やはり有力予備校がないエリアでこそその真価を発揮する。対面授業を行う予備校や塾が豊富なエリアよりも、地方に強いのが東進の特徴といえる。
関西独自の「公募制推薦入試」が築く文化
こうした塾・予備校事情に加え、独自の受験文化ゆえの市場もある。関西の塾関係者によれば、関西では私立大を中心に「公募制推薦入試」が半世紀以上前から定着していたことで、首都圏とは異なる大学受験市場が築かれているという。現在でいう「年内入試」に近い制度だが、総合型選抜などの推薦入試とは異なり、学力試験を中心に課す“簡易型の一般選抜”として発展してきた歴史を持つ。
このような大学受験市場における独自文化が、特有の予備校事情を生んでいることに加え、中学受験市場においても、首都圏とは異なる塾事情が成り立っているのが、関西地方なのだ。
〈新潮QUEでは、塾や予備校が繰り広げる熾烈な勢力争いについて、全国を10のエリアに分けて図解した「勢力マップ」を公開中。関西編については、高校受験塾編と、大学受験・中学受験編の2本に分けて、それぞれの塾市場を詳述している。〉


