数百年後は大出世の可能性も…「日本の軍人」はなぜ台湾で「神様」になったのか 映画「軍服を着た神様」が綴る驚きと“親日ではない”その理由

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「亡霊」を「神様」とするプロセス

 日本とは異なる台湾の80年。日本神の存在とはその時間の“結果”でもあるという。

「日本の植民地経営には様々な“差別と抑圧”があったので、台湾人には隠された傷のようなものが残っていたのではと思うんですね。日本の後に国民党が来ると、30~40年ほどは日本時代について触れることができなくなったので、記憶としてはますます抑圧された、未消化の状態であり続けたというか。その消化されていないものが、たとえば(台湾各地で語られている日本兵の)亡霊(現地では「鬼」)となって現れたと」

 日本神になるまでの経緯はほぼ共通している。“亡霊”として現れ、祟られたくない民衆から祀られる。そのうちシャーマンを介して民衆の小さな相談に乗るようになり、ご利益が確認されて神様となっていく。このプロセスの背景に“未消化の過去”があり、日本神とは「そうしたものと決着をつけるひとつの方法」ではないかという見立てだ。

「人間は幽霊をコントロールできないけれど、神様やご先祖ならできる。ちゃんと捧げものをあげて拝んでいれば悪いことをしないわけですから。ですから、コントロールできない歴史や記憶を、それができる別のものに“置き換えた”と見ることもできる。台湾の民衆が植民地時代と向き合うひとつの方法と言いますか」

過去の歴史を超越する

 この置き換えにより“神様としての時間”が新たに始まる。

「祟らないように亡霊を祀るというプロセス自体は理解できます。でも結局、祀っている側にとっては身近な神様の1柱なんですよね。交際相手との結婚や家族の不仲といった相談に乗ってくれて、助言が当たったり願いが叶ったりするうちに親近感がわいてくる。そうなると、先生や先輩みたいな感じで距離感が埋まっていくので、元々の出自はどうでもよくなっていく。過去の歴史を超越していくような関係性ですね。そうやって、(過去と現在の)感情をある意味で統一しているような気がします」

 人間たちが新しい歴史と記憶を綴る一方、祀られた側にも“前進”が必要だ。台湾は神様が“ランク制”で、元亡霊の日本神はまず“亡霊以上・正神未満”の「陰神」となる。そこから正神(きちんとした神様)となるには、民衆の小さな相談に乗って修行を積まねばならない。

「僕はそれがわかってきた時、日本神のことがますます好きになったんです。すごく人間的じゃないですか。『ああ、僕たち生きている人間と同じなんだな』と(笑)。切磋琢磨して、まだ努力を続けていかなきゃいけない。神様といってもまだ不完全な存在で、修行をしていかないとより良い神様にはなれない。そういうまだ生まれたての神様である彼らを見守ることができるのは、僕ら生きている側にとってもなんというか、すごく励みになります(笑)」

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