三浦春馬、高杉真宙、野村周平、賀来賢人、渡辺大知…夏真っ盛りに観たい「男たちの青春映画」5選
脱力系の夏休み
〇「森山中教習所」(2016年)
野村周平と賀来賢人のダブル主演で、大学生とヤクザのひと夏のふれ合いを描く。
愛想はいいが何を考えているかわからない大学生・清高(野村周平)は、夏休みに車の免許を取ることを思い立つ。教習所へ行くと高校の同級生だった轟木(賀来賢人)に再会する。轟木は家庭の事情で高校を中退しヤクザの組事務所に入ったが、組長に命じられ免許を取りにきたのだ。2人が通うのは非公認の「森山中教習所」。廃校になった森山中学の校庭をコースにしている。校舎に住みながら教官をしているサキ(麻生久美子)に清高は恋をするのだが……。
暑い夏の気だるさと登場人物の脱力感が、何とも言えない雰囲気を醸し出している。その魅力を成立させているのは、まったく異なるタイプの芝居をする野村と賀来だろう。
清高は恋人の気持ちが理解できず、将来にも関心がない人物。普通ならただのだらしない青年だが、野村は「とりあえず今日を生きていこう」という現代の若者をリアルに演じる。対照的に轟木は、ポーカーフェイスのクールな人物。しかし、教習所で清高と時間を過ごすにつれて、表情が少しずつ柔らかくなっていくのが分かる。賀来も「轟木は抱えているものが多く感情を出さない人物であり、その成長を演じることにやりがいを感じた」と公開当時に語っている。
若者にとって卒業前に通う教習所は、出会いがある人生のモラトリアムなのかもしれない。大人になる手前の二度と戻らない夏を、静かに描いている作品だ。
「太陽族」の夏休み
〇「狂った果実」(1956年)
「太陽の季節」(1956年)で、圧倒的な存在感を見せた石原裕次郎の初主演作品。原作者の兄・石原慎太郎は、当時奔放な生活を送っていた裕次郎たちのグループをモデルにしたという。彼らは「太陽族」と呼ばれ社会現象を起こす。
滝島夏久(石原裕次郎)と春次(津川雅彦)の兄弟はある夏の日、葉山の海で美しい恵梨(北原三枝)と出会う。純真な春次は恵梨に惹かれ、恵梨もそれに応える。しかし夏久は恵梨が外国人の妻であることを知り、恵梨を脅迫し関係を持ってしまう。それを知った春次は……。
登場する若者はいずれも裕福な家庭で育ち、好き放題な日々を送っている。劇中のセリフ「退屈」がキーワードだろう。「退屈だから女をひっかける」「退屈だからケンカする」「退屈だからヨットに乗る」。そんな言葉を発する彼らの日々は、どこか暴力的であり空虚さを背負っている。
中平康監督の公開第1作だ。手持ちカメラによるスピーディでスタイリッシュな映像、煌めく夏の海。そして衝撃的なラストは、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールら、ヌーヴェルヴァーグの作家たちに大きな影響を与えた。
経済白書に「もはや戦後ではない」と記されたこの年、若者は自分たちの生き方を模索していた。それを鮮烈に体現したのが裕次郎だろう。慎太郎はこの作品をこう語っている。「あの時代にしか、あのようにしかあり得なかった私たちの青春を、あの映画はほとんど完璧に代表してくれている」(石原慎太郎『弟』幻冬舎文庫)。
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