北関東3県の塾の勢力争い――“公立高信仰”と各県に「塾の二強」あり
一都三県にほど近く、一人当たり県民所得も比較的高い北関東は、「公立トップ高校信仰」が根強い一方で、南関東からの中学受験熱の影響も受けつつある。それぞれの県に学習塾の「二強」体制が敷かれ、県を跨いだ争いはそれほど激しくないのが特徴だ。たとえば茨城は、思学舎vs茨進を中心とした勢力争いが繰り広げられるが――。(西田浩史/教育ジャーナリスト、追手門学院大学客員教授、学習塾業界誌『ルートマップマガジン』編集長)
日本全国の中でも、茨城、栃木、群馬の北関東3県は平均所得が比較的高い地域だ。新幹線やつくばエクスプレスなどによって首都圏との距離は物理的にも心理的にも近いため、南関東の名門中高一貫校を目指す“超上位層”も一定数いる。あるいは群馬と茨城では県内の公立中高一貫校が着実に力を伸ばしていて、南関東とはまた異なる中学受験市場が広がりつつあるといえる。
とはいえ、上位層が前橋高校、宇都宮高校、水戸第一高校など各県の公立トップ高校に集い、大学受験で県外に羽ばたいていくという構図は、まだまだ揺るがない。つまり市場の中心は「中学生向けの高校受験対策」であり、そのまま大学受験まで生徒を囲い込めるかを各塾が競い合っているわけだ。
「茨進vs思学舎」の茨城
たとえば茨城。塾市場における勢力争いのバロメーターは、水戸第一、土浦第一、竹園などのトップ高校への合格実績だ。
その意味で学習塾の筆頭株は、一強体制を築いているともいえる茨進。2012年より全国的な大手塾・市進ホールディングスの傘下に入り、経営的地盤を固めつつ、県内No.1の座を長らく保つ。さらに20年には茨城北部を中心に力を持つ典和進学ゼミナールを傘下に収め、県全域での存在感は随一となっている。
これに茨城の名門塾・思学舎が続く。2005年に進学プラザ(宮城)の傘下に入ったが、つくばなどの主要都市を中心に展開し、「地元の名門ならでは」のきめ細かい指導で一定の評価を獲得している。
県全域では茨進の一強であることに違いはないが、つくば市も含めた南部においては、思学舎vs茨進という“二強”の構図になっている。南部での合格実績ではむしろ思学舎が上回る学校も一部あるくらいだ。
両者とも、高校のみならず付属中学の入試も盛んな水戸一高や土浦一高、中高一貫校としての名門である並木中等教育や竜ヶ崎一高などの中学受験対策コースをフックに、高学力の小学生を早くから獲得することにも注力している。特に、茗渓学園や江戸川学園取手といった茨城地盤の中高一貫校は、茨進や思学舎が重要な受験生の供給源になっている。茨進は親会社の市進が力を入れる映像授業でも評判が高く、それまで募集しにくかったエリアからも受験生を獲得している。
〈茨城におけるつくばエクスプレスの影響や、栃木、群馬の「二強」をはじめとした塾事情、そして「浪人生は大宮に集結する」という北関東特有の予備校事情などについて、新潮QUEのオリジナル特集「全国塾勢力マップ」で図解を交えて詳述している。北関東以外も含め、全国を10エリアに分けて、各地の塾事情を図解している〉


