不倫相手はなぜか皆「1年ほど」で去っていった。後腐れなくラッキーだと思っていたら…妻が見せた“便せん”で52歳夫が知った真実
妻が見せた念書
その晩、長女は大丈夫だと思うと栄里さんに報告すると、栄里さんは「そう」と言って、数枚の便せんを彼に見せた。
「今回のあなたの振る舞いには腹が立ったと妻が言うんです。その便せんを見て息が止まりそうになりました。30代のころつきあった美知子やルミの名前と印鑑が見えたから」
なんとそれは尚彦さんの不倫相手から、栄里さんがもらってきた「念書」だった。金輪際、尚彦さんとは会いませんという言葉とともに、100万円という金額が見えた。つまり、栄里さんは夫の不倫相手に会ってお金を渡し、別れるという念書をとっていたのだ。だから彼女たちはあっさり「じゃあね」と別れていったのだろう。
「オレの価値は100万か、と思わず言ってしまいました。栄里はフンッと鼻で笑って、そんなところなんでしょうねって。不倫の恋なんかするより100万もらって別れたほうがいいかもしれませんね、確かに」
さらに、予想外の「告白」が…
妻は思いがけないことも言った。
「美知子もあなたも、恥を知らないわよね。同じ会社に私がいるのに、よく平然とつきあっていられたものだと思った。美知子はね、妊娠していたのよ。あなたの子」
尚彦さんは言葉が出なかった。聞いてないと思わず言った。彼女はもともと生むつもりなんかなかった。堕胎するしかないから費用と慰謝料を寄越せと言った。私は彼女の人生を考えれば当然だと思ったから、ここに書いてある以外にも払った。だからこそ、長女が人生を賭けて子どもを生むと聞いたとき、今はそのつもりでも、絶対に後悔すると確信したわよと激しい口調で言った。
「僕はノックアウト状態でした。僕の女性関係に対して妻がそんなことをしていたのもショックだったし、美知子が妊娠をそんなに軽々しく思っていたことにも驚いたし、だからといってそれと長女の妊娠をつなげてしまうのもなんだか違うと思ったし。もうわけがわからなかった」
妻がそうやって自分を監視、管理してきたことにも違和感があった。栄里さんについていけば間違いないと思っていたことが、こういう結果となって返ってくるとは思っていなかった。
「ただ、僕が怒るのは逆ギレですからね……。いけないのは僕なんだとわかってはいるけど、責められることもないままに勝手にすべて処理されていたということにどうしても納得できなかった」
あなたと家族を守るためだったという栄里さんの言葉に嘘はないだろう。それをありがたいと思うべきなのかもしれない。だが、尚彦さんのモヤモヤした気持ちはおさまらなかった。
表面上は「凪」
長女はすっかり元気になり、来春から大学院に行く予定だ。冷静にものごとを見つめている次女は希望通り、今春、大学の薬学部に入学した。
「表面上は凪いでいるけど、たぶん水面下で妻と僕はお互いに失望していると思います。ずっと真実を明らかにせず黙っていた栄里の意志の強さはすごいと思うけど、いっそその場で責められたほうが信頼関係は崩れなかったかもしれない……」
とやかく言っても悪いのは自分、この先はきちんと自分自身と向き合ってみたいと尚彦さんは消え入りそうな声になった。
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家庭の中で、尚彦さんは自分の弱さと妻への違和感を抱えたままだ。記事前編では、栄里さんとの出会い、結婚に至るまでを紹介している。
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