若者がドンキで「クジラの刺し身」を買う時代に…「鯨肉」が再び“身近な食材”になった背景とは

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ドンキで“生ミンク”

 とはいえ、現状で首都圏などでは、クジラは一部の専門店などでしか味わえず、「どこで売っているの?」「どこで食べられるの?」といった印象が強かった。実際、すっかり食卓から遠ざかっていたため、クジラの消費量は現在、年間約2000トン(農林水産省データ)。20万トンほどだった1960年代の前半に比べ、1%以下に急減している。だが、最近、クジラ流通を巡る状況は様変わりしているのをご存じだろうか。

 まず、日本最大級の総合ディスカウントストアで、「驚安の殿堂」として知られる「MEGAドン・キホーテ大森山王店」(東京都大田区)の鮮魚売り場で6月中旬、「本日の目玉!」として、青森県産の「生ミンククジラ」(100グラム税抜き990円)がズラリと並んでいた。その横には、さらに手軽なアイルランド産のニタリクジラ(同499円)の品揃えも。

 ともに豊洲市場の仲卸「山治」から仕入れた刺し身用で、下ろし生姜のミニパックが添えられていた。同店鮮魚売り場の責任者によると、「2年ほど前からほぼ毎日、クジラ刺しを店頭に並べていて、意外と若い年代の主婦がクジラ目的で鮮魚売り場へ来ることもある」と話す。

 魚離れが進む近年、「クジラのような変わり種で店頭を目立たせることは集客の上で大事なこと」(鮮魚売り場責任者)と、クジラが水産物の売り上げに一役買っている。ドン・キホーテでクジラを販売しているのは同店のほか、「MEGAドン・キホーテ」の成増店と立川店だけだが、「今後は扱う店も増えるかもしれない」(同)とみている。

TSUTAYAでは「くじらジャーキー」

 一方、他の大手スーパーでは今年から、都内多くの店舗でおよそ20年ぶりにクジラベーコンの販売を開始したほか、東京都や埼玉県などで店舗展開する「東武ストア」は、今年からナガスクジラを使った握り寿司の販売を開始した。

 埼玉県朝霞市の店では、クジラの刺し身用やベーコンなどのコーナーとは別に、魚介の握り寿司が並ぶコーナーに3種(畝須・本皮・赤肉)8貫入りの「くじら寿司」セットを販売している。

 セットの価格は880円(税抜き)で、サーモン、マグロ、イクラなど8貫入りの「うみ」1080円(同)よりも安く、「年配者から若者まで幅広い年齢層に好評で、魚介の寿司と合わせて買っていく客もいる」と同店関係者は手応えを感じている。

 さらに、飲食以外の業態でもクジラがお目見え。DVDレンタルや書籍販売を展開するTSUTAYA(ツタヤ)は今年3月、クジラの生態や世界の捕鯨の歴史などを紹介した『鯨と人類』(ニュートンの別冊)発売とともに、一部店舗で「くじらジャーキー」(30グラム入り税込み378円)などの販売を開始。現在は北海道から九州まで40店舗以上で販売され、好評という。

 クジラ人気がにわかに高まってきた理由としては、海洋環境の変化に伴うサンマやイカ、サケなど主要魚種の不漁が挙げられる。クジラにとっても海水温の変化などが及ぼす影響はないとは言えないが、周辺海域の資源管理に基づく捕鯨に切り替え、安定した量・質・価格で流通していることを考えると、今後、大衆化は一層進むものとみられる。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文藝春秋)。最新刊に『国産の魚はどこへ消えたか?』(講談社+α新書)がある。

デイリー新潮編集部

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