「戦争帰りの老ホストが、客に“日本男児かくあるべし”と…」生バンドに社交ダンス、リーゼント…歴30年のベテランが語る“平成ホスト”の異世界

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ケタ違いの日常

 当時の愛本店は、オープンから午後12時までの「1部」、深夜帯で若手が揃う「2部」で構成されていた。

「配属された初日、誰もが知るデベロッパーの創業者一族の女性が新規で来店しました。初回料金は基本5000円なのに、その方は20万円も使ってくれた。でも会計の金額を見た瞬間に怒り出してね、社長を呼べ、なんて言うんです。それで“私に対して20万円なんて見くびらないで”と言い200万円払いました。本物のお金持ちってそんな考え方をするんやーって心底驚きましたね」

 そんな上客だらけの愛本店で“大阪からやってきた男”は、またたく間に人気者になった。評判が評判を呼び、「大物歌手」や「人気アイドル」といった芸能人たちからも指名が入る。

「歌手のK.Nさんなんて、本当に飲み方がきれいだった。1本50万円のワイン・ラトゥールを2~3本、ささっと飲んで200万円置いて帰る……その姿がカッコよかったですねぇ。逆に評判悪かったのは、セレブキャラのDさん。いつもなにかと難癖付けて、支払いもせずに帰っちゃうんですよ(笑)」

 また、ある有名エステチェーン経営者は、部下を大勢連れてはくるが、ボトルは入れず、ワインやシャンパンを抜きもせず、いつも最低料金。そのリッチなマダムめいた雰囲気から想像もつかず、意外に思ったという。

「芸能人や経営者のほかに、なぜか詐欺師にも好かれましたね。ずいぶん羽振りがいい人だなあって思っていたら後日、捕まったりしていました。5000万円くらいをバッグに入れて来たお客さんもいた」

 あまりにも「普通じゃない人たち」と出会う日常に、自分を見失いそうになった光司さん。

「25歳の時、“もう一回大学を目指そう”と思ったんです。寝る間を惜しんで受験勉強をして、早稲田大学政経学部に合格した。もちろん学費は自分で払いました。そんなボクを見て“俺も”とアニキも上京。兄弟で愛本店でホストをやったんですよ」

飛び交う大金

 関西学院大学を卒業し、早稲田大学に進学した“元祖インテリホスト”の光司さんだが、うっかり客に騙された経験も。

「古いお客様が投資話を持って来て“3倍にするよ”と。その言葉に釣られて3300万円渡しちゃった。結局その人の事業が失敗してゼロになったのですが、“光司くん、ごめんね”のひと言でおしまい。でも、いい勉強になりました。昔のホストってね、客に飛ばれ(=売掛を支払わないまま逃げられ)てもなんとかなるように、保険としての蓄えをしていたんですよ。まあ、あれで一気に目減りしましたけど(苦笑)」

 また別の羽振りがよかった70代の女性客は、しばらく見ない間にとんでもない金額の借金を抱えてしまっていた。「最後に会いたいから」と言われ会った女性は、ずいぶん小さく見えたという。光司さんが“今までよくしてもらっていたから”と2000万円を渡したところ、大いに感謝されたそう。

 そんな平成時代を味わった光司さんは、「あの頃は客とホストがフィフティ・フィフティ。血が通った関係だった」「いまのホストは客をただのATMだと見ている」と憤る。

「今のホストがやっているのは、いわば新興宗教の“恋愛版”。かたや『先祖の霊が祟る』など不安をあおって壺を買わせる。かたや恋愛感情を利用して高い酒を注文させる。手法は違えども、人の気持ちにつけ込んで金を使わせる構造は同じです」

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