今年の桜桃忌も荒れた「太宰治」の墓 墓前にエナジードリンク、たばこ、横断幕…遺族の「やめて」届かず

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「防犯カメラも検討」

 こうした状況をうけ、市は公式サイトやXで《節度ある参拝に、ご協力をお願い申し上げます》と投稿。さらに、《墓に来られた皆様が気持ちよくお参りできますよう、お供え物についてはご遠慮いただくか、お持ち帰りいただき、お気持ちだけ頂戴できればと心よりお願い申し上げます》という遺族のメッセージを紹介した。

「今後も悪意のあるいたずらが続くようであれば、市としても防犯カメラなどの設置も検討しなければいけないですね」(市の担当者)

 声明を発表した経緯やカメラ設置の可能性までは明かさなかったものの、市のメッセージはメディアでも報じられ、《観光公害とか観光テロでしかない》《無責任な墓参観光》と、供え物の置き去りを問題視するコメントが相次いだ。

 その結果、6月15日に津島淳氏が公開した画像には、津島氏による清掃が行き届いた墓所と、「お供え物等はお持ち帰りください」と記された注意書きプレートの様子がみられ、参拝者に供花や供物を残さないよう協力を求める呼びかけは、徐々に浸透するかに思われた。

 ところが、6月19日の桜桃忌当日になると状況は一変。全国から集まった多くの太宰ファンによって、墓前には再び花や飲食物が並び始めたのだ。例年同様、さくらんぼは墓石に詰められ、酒やたばこ、エナジードリンク、作品にも出た味の素に太宰宛の手紙、今年は手製の横断幕なども添えられ、SNSにはその様子があふれた。

 いわずもがな、こうした行動は一部の“困った”太宰ファンによるものだ。毎年、静かに手を合わせに墓前にやってくる太宰ファンは、困惑を隠せない。

「誰かが一つ置けば、次の人も置きたくなるもの。せっかく持ってきたのだから記念に……とか、みんなが供えているから大丈夫、などと思ってしまうかもしれません。敬意や追悼の意がないわけじゃない。悪気がない太宰ファンであることはわかりますが……」

遺族の意向を

 翌20日にはさくらんぼだけが撤去されていたものの、酒やたばこなど、その他の供え物は残されたまま。21日、それらを清掃したボランティアの女性に話を聞いた。

「毎年、この時期には、さくらんぼを墓石に詰めるだけじゃなく、お酒を飲みながらお墓に語りかける人、墓前でタバコを吸う人、水受けに火のついたタバコを放置する人、太宰への手紙をしたためて置く人など、いろいろな人が現れます。でも、ここは津島家のお墓。人の家のお墓を自由にお参りさせていただけるだけでもありがたいことなので、なによりご遺族のご意向を尊重してほしいですね」(ボランティア女性)

 追悼の場で本当に尊重されるべきなのは、故人を偲ぶ気持ちの強さではなく、その場所を守っている人たちの思いだ。気持ちは置いてもいいから物は持ち帰って――遺族が伝えたかったことはこれにつきるだろう。

 太宰の故郷、青森を拠点とする団体「太宰治検定実行委員会」事務局は、三鷹市のコメントが出た翌日、公式Xに以下のようなコメントを出している。

《お墓参りのお供えについて考えていた時、大宰治『津軽』 の一節を思い出しました。「本当の気品というものは、真黒いどっしりした大きい岩に白菊一輪だ」という言葉です。 心がこもっていて、きちんと整えられていることが、いちばん大切なのかもしれませんね》

「お気持ちだけ頂戴いたします」という津島家の言葉がすべてのファンに届き、来年の桜桃忌には静かに太宰を偲ぶ気持ちを持ちたい。

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