「体罰は絶対に許せません!」という人が目を背ける「2024年に校内暴力が過去最多」を更新した現実…崇高な理念だけで子どもは守れるか
校内暴力は増加傾向
批評家で、塾経営者でもある物江潤氏は、「新潮QUE」で戸塚氏の著書『本能の力』を読み解くという試みを行っている(新潮QUE 体罰と共に消えている教育現場の「常識」とは 戸塚宏『本能の力』を読む)。物江氏は「筆者自身は、戸塚氏の体罰肯定論には与しない」としながらも、「同書には耳を傾けるべきものがある」と述べている。
物江氏が挙げている「耳を傾ける」ポイントの中で、学校教育の現場を知らない人には新鮮な指摘がある。それは校内暴力の数は増え続けている、ということだ。
「現場を知らない方にとって、校内暴力は過去のものに思われるかもしれない。金八先生か尾崎豊の時代だと。しかしまったくの誤解である。
『令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)』では、『小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約12万9千件で過去最多』だとしている。暴力行為の発生件数は、高等学校を除いた小・中学校合計で見ても12万3036件に達し、1997年度以降で最多だった。暴力行為の発生件数が高い水準であることについて、文科省は同通知にて『いじめの積極的な認知に伴うものや児童生徒に対する見取りの精緻化によって把握が増えたことなどの要因』とするが、校内暴力が深刻な問題として存在することは確かだ」(前出の物江氏の論考から引用)
金八先生ならば、コラァと言いながら問題生徒を張り倒すくらいのことはしていたかもしれない。しかし現代の教師はそんなことは絶対にできない。結果として、その暴力の被害者を守るのはより困難になる。
これに対して、文科省は現場に対して、一つの武器を与えている。それが「出席停止制度」だ。あまりにも問題がある生徒は、学校に来ることを禁じる。それによって全体の秩序を維持するという考え方である。が、この制度は機能していないという。再び、物江氏の文章を引用しよう。
「文科省も手をこまねいているわけではない。2001年に出された『出席停止制度の運用の在り方について(通知)』では、『出席停止の制度は、本人に対する懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられた制度』であるとしたうえで、生徒の『生命及び心身の安全を確保することが学校及び教育委員会に課せられた基本的な責務』とし、出席停止制度を『一層適切に運用』するよう求めている。
が、実際の運用数は驚くほど少ない。制度の1年間の利用件数はせいぜい数十件程度にとどまり、一向に改善される気配がなく時が流れた。小学校に至っては、1997年度以降最大でも年に4件であり、過半数の年で利用実績が皆無であった」(同)
年間10万以上の暴力が認知されているのに、出席停止はわずかヒトケタ。
これでは事態が改善されるはずもない。前述の通り、校内暴力は増加傾向のままだ。その状況を受けて、文科省は令和6年の通知では「暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、出席停止制度の措置をとることをためらわずに検討し、犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報するなど、毅然とした対応をとること」とかなり踏み込んだ方針を示している。
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