「NHK」と「Netflix」問題点の本質 受信料で成り立ち、法人税ゼロ…“巨人”の参入に民放も異例の苦言

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民放は苛立つ

 NHK放送文化研究所の6月の発表によると、平日に1日15分以上リアルタイムでテレビを観る人は16~19歳で27%、20代で33%しかいない。若者がYouTubeやTikTokを観る時間は増える一方、若者が熱狂する番組はそう多くはないから、そんなものだろう。

 民放各局が地上波の視聴時間減少を補う存在と考えているのは配信である。だから著作権も押さえようとしている。一方で新しい動きもある。TBSは国内大手配信のU-NEXTと資本で結び付いているが、2022年にはNetflixにも作品を提供する制作会社・THE SEVENを設立した。

 TBSは動画進出と制作会社の戦略が最も進んだ局と言われている。

 THE SEVENがつくった作品の1つは、現在もNetflixで観られる映画「愚か者の身分」(2025年)。アウトローたちの群像劇だ。かなり残虐なシーンがあり、地上波での放送は無理。最初から動画配信をメインに考えているのだろう。

 民放の配信ビジネスの成否には各局の存続すらかかっている。そこに放送法によって受信料収入が約束され、特殊法人なので法人税も免れているNHKが参入したら、カチンと来ても不思議ではない。テレビ東京の吉次弘志社長(62)は4日の定例記者会見で、NHKへの不満を隠さなかった。

「受信料で成り立っているNHKは特殊法人。われわれ民間会社とはコンテンツのつくり方も、コンテンツに対するお金のかけ方も根本的に違う。少し自制的であるべきではないか」

 テレビ朝日のカリスマ会長で民放連の会長も務める早河洋氏(82)は12日の会見で、「NHKの名作ドラマを国際的に露出させたいのだろう」と語った。二重の意味で皮肉に聞こえた。

 NHK側の主張である「日本の社会や文化を世界に発信する」ことが目的とは受け止めていない。また、あえて「NHKの名作ドラマ」と言った。制作会社の力を借りてつくっていることは早河氏も分かっている。それを揶揄しているようだった。

 早河氏はこうも語った。老獪さを感じさせる言葉だった。

「受信料で制作したコンテンツであることを踏まえれば抑制的であるべきと思う一方で、(1983度制作の)『おしん』が世界70か国で放送されたことなどを踏まえれば、一定程度は許容できるのではないかとも思う」

 NHKの海外発信には不満もあるが、ある程度なら反対しない。いつでもスタンスを変更できるようにしてある。百戦錬磨の早河氏らしい。

 ポイントは「おしん」だ。正確には75か国・地域で放送された。主人公・おしんが並ならぬ苦労の末に成功する姿が、海外の視聴者も感動させた。

 ただし、おしんの境遇と自分を重ねやすいアジアやアフリカの途上国の視聴者が中心だった。米国やカナダなど先進国でも放送されたものの、人気が出たとは言いがたい。民放が想定してきた金になる海外マーケットとは違ったのである。今度は配信だから完全に競合する。

 もしもNHKが配信での勝者になったら、民放と系列の新聞は黙っていないだろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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