「NHK」と「Netflix」問題点の本質 受信料で成り立ち、法人税ゼロ…“巨人”の参入に民放も異例の苦言
単独制作ではない
NHKは22日から世界最大の有料動画配信サービス・Netflixを通じ、旧作ドラマ6作品の国内外配信を始めた。今年度中に過去の計19作品を190以上の国・地域で配信する。これには物議を醸しそうな点が2つある。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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NHKの井上樹彦会長(68)はNetflixを通じて旧作ドラマを配信する理由をこう語った。
「日本の社会や文化を世界に発信する使命がNHKにあって、インターネットの時代に国境や時空、時間を超えて世界中にコンテンツを届ける可能性を検証する重要な1歩」(6月17日、定例会見)
NHKが日本の放送文化の屋台骨を背負っているという自負がにじんでいる。井上氏は1月下旬に就任した18年ぶりの生え抜き会長だ。強気、剛腕の人として知られる。
気になるのは「日本の社会や文化を世界に発信する使命がNHKにあって」と謳いながら、配信が始まった6作品のうち4作品は外部の制作会社の力を借りてつくられていること。
制作会社の協力を得てつくった作品が、まるで「THIS IS NHK」のような触れ込みで海外に発信されている。これについては民放のみならずNHK内にも疑問の声がある。NHKの制作能力が誤解されかねない。
NHKは若手ドラマ制作者を海外の芸術大などに留学させることもある。まるでキャリア公務員の海外留学だ。恵まれている。民放や制作会社では考えられない。
そこまでしているのだから「NHKが過去に放送した旧作ドラマを海外に発信する」のではなく、「独力でつくった旧作ドラマを発信することで、公共放送であるNHKの制作能力を世界に見せつける」べきではないか。海外発信する作品は独力でつくったものに限定する。スタッフの励みにもなるはずだ。
かつてNHKには「ザ・商社」(1980年)を演出した和田勉さん、「あ・うん」(同)を演出した深町幸男さん、鶴田浩二さんや高倉健さんら大俳優の圧倒的信頼を得て、「男たちの旅路」(76年)や「チロルの挽歌」(92年)をつくったプロデューサー・近藤晋さんらスター制作者が何人もいた。
今はどうなのだろう。評判高い作品が多い「ドラマ10」(火曜午後10時)は2024年1月から現在までに13作品を放送したが、そのうちNHKが単独で制作したのは「燕は戻ってこない」(2024年)と「魯山人のかまど」(26年)だけである。
Netflixを通じて海外発信されている4作品は、まずドラマ10の「昭和元禄落語心中」(18年)。3人いた制作統括のうち、筆頭者の所属先はテレパックだった。フジテレビ系「その女、ジルバ」(2021年)などをつくった老舗である。
河合優実(25)が主演した同「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(2024年)の筆頭制作統括はグループ内のNHKエンタープライズに所属していた。同社は株式会社。ベテラン組にはNHKからの出向者がいるが、新卒採用も多い。NHKと違い、映画やイベントなどの営利事業も出来る。
次席の制作統括の所属先はAOI Pro.。CM制作でも名高い。演出は映画「勝手にふるえてろ」(2017年)などを手掛けたフリーの大九明子監督(57)だった。
3番目の制作統括はNHKで「あまちゃん」(13年度前期)などをつくり上げた大エース・訓覇圭氏(59)である。だが、演出までが外部なので、NHK単独でつくるのは難しかっただろう。
定時制高校生たちの哀歓を活写した同「宙わたる教室」(24年)の筆頭制作統括はランプに所属。チーフ演出も同社から出ていた。司法と共生社会のあり方を問うた同「テミスの不確かな法廷」(26年)の制作の中心だったのも同社である。同「東京サラダボウル」(25年)の筆頭制作統括はNHKエンタープライズに所属していた。
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