「銀河の一票」はなぜ伸び悩んだのか 出色の出来なのに視聴者を分断してしまった「政治色」という避けられない壁

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なぜ、波瑠を起用?

 米国は政治ドラマ大国だが、視聴者が成熟しているからではない。巧妙に幅広い層に観せるための仕掛けが施してある。たとえばNBCで7年にわたって放送された大ヒット作「ザ・ホワイトハウス」(1999年)は、リベラルな民主党の大統領が主人公だった。だが、保守的な共和党の政治家や支持者も観ていることで話題になった。

 なぜかというと、共和党の政治家も立てたからだ。どちらの党の政治家も国を深く愛し、国民のことを真摯に考えていると表現した。両党の政治家はともに身を粉にして働いた。政策も双方のものを流した。

 日本の政治ドラマは与党が悪役になることばかり。また与党政治家は権力奪取しか頭にない場合が大半だから、政策がないケースが目立つ。現実には政策のない政治家はごく少数派のはず。この点は日本の政治ドラマも一考の余地がある。

 日本テレビ「月夜行路-答えは名作の中に」(放送終了)はスマッシュヒットした。個人視聴率はおおよそ2%台半ばから約3%。16本あった春ドラマの週間ランキングでは5、6位が多かった。

 主人公は2人。まず波瑠(35)が扮したバーのオーナーママで、覆面作家の野宮ルナ。さらに麻生久美子(48)が演じた主婦の沢辻涼子である。涼子の夫は文芸編集者をしている。事件物なのに観る側の気持ちを辛くさせる重たさがなく、洒落た作風だった。

 ただし、根元でいただけない部分があった。ルナはトランスジェンダー女性(MtF、誕生時に男性と割り当てられたものの、本人の性自認は女性の人)である。それなのに、どうして波瑠を配役したのか。

 映画「ミッドナイトスワン」(2020年)は草なぎ剛(51)がトランスジェンダー女性を演じたから、現実味があり、広く感動を呼んだ。世界的に評価された。「映画は別」とは言えない。ドラマも映画も配信で観られる時代なのだから。

 ルナがトランスジェンダー女性であるということは最終回まで関わる重要なファクターだった。トランスジェンダー女性の女優は西原さつき(40)ら決して少なくないのだから、その起用を選択肢に入れるべきだったと考える。

 NHKはNetflixを通じ、ドラマの世界配信を始めた。民放ドラマもより積極的に海外展開する時代になる。女優であると同時にLGBTQの権利に関する社会活動家であるハンター・シェイファー(27)たちが大活躍する米国。その人々が、「月夜行路」を観たら、どう思うだろう。強い違和感を抱くのではないか。

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