がんの手術を最初に打ち明けたのは妻ではなく24年続く恋人 「もし命果てたら…」63歳夫が先輩に託した“最後の頼み”
【前後編の後編/前編を読む】妻と結婚して30年。恋人とは交際24年。63歳夫が語る「ふたりがいないとバランスがとれない」
田橋潤之介さん(63歳・仮名=以下同)は、妻・静流さんと結婚して30年。ふたりの娘を育て、穏やかな家庭を築いてきた。その一方で、仕事で知り合い、恋に落ちた紗和さんという交際24年の恋人がいる。初めてふたりで夜を過ごした朝、彼女も既婚者だと知ったが、関係は終わらなかった。家庭を壊したいわけではないが、紗和さんには、妻の静流さんに言えない本音や家族のことまで聞いてほしくなるという。妻は「同じ船」、紗和さんは「別の船に乗りながら同じ島を目指す」ような感覚だと、潤之介さんはそれぞれの関係について言う。
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【前編を読む】妻と結婚して30年。恋人とは交際24年。63歳夫が語る「ふたりがいないとバランスがとれない」
潤之介さんは紗和さんとの関係を、もちろん誰にも話さなかった。紗和さんも、誰にも言っていなかった。ただ、一度だけ、ふたりで食事をしているところを、潤之介さんの職場の先輩に見られたことがある。
「その場ではもちろんきちんと紹介しましたよ。先輩も『ああ、あのときお世話になった……』と彼女のことを覚えていた。でも翌日、『やけに親しそうだったな。大丈夫か』と言われて。その先輩のことを僕は大好きだったし信頼していたけど、『大丈夫ってどういうことですか』と笑って流しました。先輩は僕の肩をポンと叩いて、『何か困ったことがあったらいつでも聞くよ』と言ってくれた。もちろん、僕は打ち明けてはいませんが、いざとなったら話せる人がいると思うだけで気が楽になりました。そのことは紗和にも伝えた記憶があります」
無理をせず、でも最大限に努力をして会う時間を作り出す。それがふたりの暗黙の目標となっていた。
私、離婚したの
5年ほどたったとき、別れ際に紗和さんがさりげなく言った。
「私、離婚したの。引っ越してひとりで暮らしているから、今度、うちにも来てって。本当にさりげなく。その日は僕に時間がなくて、お茶を飲んだだけで別れたんですが、なにを言われたのかすぐには理解できなかったくらいでした」
すぐにメールを送って確認すると、離婚したのよ、それだけと返ってきた。数日後、ゆっくり会って話を聞いたが、彼女は「重荷を下ろした感じ」と笑顔を見せた。
「僕のせいかもしれないよねと言ったら、『なにしょってるのよ』と笑い飛ばされました。もともとうまくいってないって言ってたでしょう、と。夫は世間体を大事にするから離婚したくはなかったようだが、彼女は実態のない結婚生活は無意味だと突っぱねたそうです。本当かどうかはわかりません。僕がいなければ彼女は離婚しなかったのではないかという疑問もずっと抱いていましたが、彼女がそうだと言うはずもなくて」
むしろ、自分が離婚したから、あなたはちゃんと結婚生活を続けてねと紗和さんは真顔で言ったそうだ。
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