茶も飲まず…27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が任意出頭で見せた“異様な用心深さ”【昭和の未解決事件】
「最後のツメ」をする前に出国
そして届いたのはハンカチだった。
〈“協力者”は、ベルメルシュ神父が捨てた鼻をかんだハンカチを見つけ出し、捜査員に渡した。鑑定の結果は……どうなったかというと、これが意外にも、A型でもAB型でもなかった。Oまたは非分泌型というヤツであった。しかし、“協力者”が持ち出した神父のハンカチが、まこと神父のものであったのだろうか。私はいま一つ疑っている〉
捜査班はもう一度、神父を呼んで「最後のツメ」をする予定だった。神父本人にも伝えて了承を得ていたが、6月11日午後7時半、神父は羽田空港から飛び立った。
〈正午ごろ、例の“協力者”から羽田へ神父が向ったという連絡を受けたが、すでにすべては遅かった。逮捕状が取れないのだから仕方がない〉
こうして神父に対する捜査は終わった。神父は状況的にほぼ“容疑者”とみなされていたが、捜査中も明確にならなかったのは動機である。
〈私の推理では、神父は被害者を“自分の女”として囲うつもりだったが、彼女は、それでは結婚できないと断ったのではないか。あくまでも痴情がからんだ事件と思う。バチカンの工作による密輸の協力を断わったため殺されたと小説では書かれたが、私は、それは関係なかったといまも確信している〉
(以上「週刊新潮」1982年8月19日号掲載記事より)
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松本清張氏の有名作品に
先の記事で加藤氏が言及した「小説」とは、松本清張氏が1959年11月から連載形式で発表し、後にドラマの原作にもなった『黒い福音』(新潮文庫)のことである。この事件に多大な関心を抱いていた松本氏は、その作品の前にも「『スチュワーデス殺し』論」と題したノンフィクションを発表していた。
ベルメルシュ神父が羽田から離日する際、そこに居合わせた入国審査官の激白は【27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が現れた羽田空港“緊迫の15分間” 通報した出国審査官に警察が放ったまさかの言葉】で報じている。神父はそのままベルギーに帰国すると、再びカナダの教会に赴任。2017年3月17日に96歳で死去し、カナダの地に葬られた。
Tさんの死亡を告げても、ベルメルシュ神父は驚かなかった――。第1回【「ほ、死んだですか。よい信者でした」 27歳女性変死「疑惑のベルギー人神父」が見せた“不可解な言動”【昭和の未解決事件】】では、遺体発見から神父と警察が初めて顔を合わせるまでを伝えている。
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