「上司と寝ちゃった」。妻の告白に嫉妬はない、むしろ感動、惚れ直した…45歳で“0日婚”した男の女性観

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「結婚って何なのか」

 30歳のときに同業他社に転職したが、相変わらず恋をしたり破れたりしながら生きてきた。結婚というものには踏み込めなかったそうだ。

「結婚を恐れていたのか、家庭を作るのが怖かったのか自分でもわからないんですが、結婚には縁がないとずっと思い込んでいました。叔父には、怖がらずに結婚してみればいい、ダメなら離婚すればいいんだからさと言われたけど、そう簡単にはいきませんでしたね。そもそも結婚って何なのか。人と一緒に人生を歩いていくなんてできそうにないし、長い期間、同じ家に誰かがいるわけでしょ。それがそもそも慣れてないことだし」

 常に誰かを慮り、気遣って生きるなどということができるはずもないと彼は言った。お互いに思いやりをもって共同生活を送るというイメージも現実的ではなかった。

「高校時代の寮生活から、僕はほぼひとりで暮らしてきた。女性の家に転がり込んだこともあるけど、それはあくまで一時的なもの。生活をともにするという感覚がわからないんですよ。ドラマのように、誰かが僕のために料理をしてくれたり、あるいは僕の給料を誰かが使ったりするのがよくわからなかった。ルームシェアみたいな状況ならと想像したこともあったけど、それなら結婚する必要もないですしね」

 気づいたら40歳になっていたが、彼の生活は変わらなかった。仕事が中心、学生時代にバイトをしていたジャズバーにときおり顔を出した。転職して落ち着いたころから、趣味の範疇で自分でもサックスを吹くようになっていた。楽器は楽しいですよねと彼は笑った。

45歳の「交際0日婚」

 そんな彼が45歳のときにいきなり結婚した。相手は10歳年下で、交際0日だという。

「例のジャズバーで、1回だけサックスを吹かせてもらったことがあるんです。その日はライブがなかったのと悪天候だったためお客さんが少なくて顔見知りばかり。サックスを習ってるなんてほとんど人には言ってなかったんですが、オーナーが『吹いてみれば』と言ってくれて。本当に申し訳ないと思いつつ、お客さんたちに1杯おごって聴いてもらいました」

 いつか人に聴かせたいと思っていた曲を吹いた。可もなく不可もないような演奏だったが、席に戻ると、顔見知りの朋香さんという女性がやってきた。

「お疲れさまと1杯奢ってくれたんですよ。『すごくよかった』とも言ってくれた。お世辞であってもうれしかった。オーナーやお客さんとも話し込んで、その日は珍しく酔い潰れるくらい飲みました。気づいたら、彼女の部屋にいたんです。いい年してなにをやってるんだろうと思いましたよ」

 まだ夜は明けていなかった。彼女と一緒にベッドに寝ていたが、何かした記憶はない。彼自身も上着を脱いだだけで寝ていた。そのまま帰ろうとすると彼女が目を覚ました。

「『帰るの? ここから会社に行けば?』と言われました。彼女は寝ていなかったのかもしれない。僕はその日、代休をとっていました。そう言うと彼女は『私も今日は休みなの』と。週末が休みではない仕事だからって。じゃあ、もう少し寝ようかと言っているうちにまあ、あれやこれやと……」

 関係をもってしまった。「私はピルを飲んでいる」という彼女の言葉を信じた。それに彼自身、自分に子どもができるとは考えてもいなかった。ところが数週間後、彼女から妊娠したと言われた。

「びっくりしました。それが僕の45歳の誕生日だったんです。実は、父も母も45歳で亡くなっている。僕にとって、45歳という年齢は何か意味があるのではないかと思いました。親と同い年になった、親より生き延びられる可能性が高まった。だとしたら生き方を変えるのもありかもしれない。そう思って結婚しようと言ったんです」

 例のジャズバーでは常連さんたちがお祝いしてくれた。人にそんなに祝ってもらうのは初めての経験だった。

「朋香はバツイチでしたが、僕はそんなことは気にしてなかった。彼女には共同生活が怖いと正直に話しました。だったら今のままでいいじゃないと彼女が言った。ただ、子どもが生まれたら近くにいないと不便だからと、僕が彼女の部屋の近くに越しました」

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