憧れの街「港区白金」を廃墟にする“エゴ”と“無策” タワマン再開発の裏側

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地権者のエゴが利用されている

 では、再開発の対象になった住民一人ひとりにとってはどうだろうか。

 あるエリアが都市再開発事業の対象になるためには、都市再開発法の規定により、地権者の3分の2以上が同意する必要がある。「3分の2以上」というハードルは案外高い。改憲も衆参両議院で総議員数の3分の2以上の賛成が必要だから簡単ではないのであって、そのハードルを超えなければ国民投票に進めない。

 ところが、現実には、日本中で数多くの再開発事業が進められてきたし、いまなお進められようとしている。「3分の2以上」というハードルが超えられたからだが、なぜ多くの賛成が得られるのか。それは、自分の「持ち出し」は最小限で済むので、得だと考える地権者が多いからである。

 都市再開発法による開発スキームは、建物を高層化して「保留床」と呼ばれる新しい床を生み出し、それを売却して建設費に充てるというものだ。このため、地権者は追加の費用負担がほとんどないまま、新築されたビル内の「権利床」に入居できる。したがって、自己負担でビルなどを建て替えるのにくらべて得だ、と考える地権者が多い。

 たしかに、再開発の対象が〈老朽木造建築物が密集している地区等において、細分化された敷地の統合、不燃化された共同建築物の建築、公園、広場、街路等の公共施設の整備等を行う〉という必要がある地域であるなら、地権者が追加の費用負担もなく新しいビルに入居できて、結果的に得をしても、非難されるいわれはない。

 だが、白金1丁目地区のように、そもそも治安上の問題や災害時の危険性に関して、問題がないエリアの場合、地権者のエゴが民間の開発業者に利用されている、というのが実態である。前出の「白金1丁目東部中地区」の住人が語る。

「再開発を推進したがっている地権者からは『古い戸建てを新しいマンションにして相続を有利にしたいから』『売りにくく住みにくい変形した土地をこの機に売り抜きたい』『ボロボロの工場をタダで新しい設備にできるのだからラッキーだ』。そういった声ばかりが聞こえてきます。自分自身の経済的利益のために、このままの状態で住み続けたい人が犠牲になったら、たまったものではありません」

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